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LIXIL、なぜ大きくつまずいたのか?海外子会社破綻で巨額損失 積極海外展開に狂い

文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授
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 M&Aにおけるデューデリジェンスは容易ではない。状況に応じて、取引先や関連金融機関にまでヒアリングを実施するなど、柔軟かつ繊細な判断が求められる。特に中国の場合、先進国の視点・論理に基づく評価基準が最適なデューデリジェンスにつながるとは限らない。

 今回、リクシルが不正会計に気付くきっかけになったのは、中国の銀行から届いた督促状だったという。リクシルにとってみれば、「やることはすべてやったから仕方がない」との考えもあるだろう。しかし、グローバル化を前面に押し出した経営戦略を進める上で、こうしたミスは企業に対する信用を大きく傷つけかねない。今回の案件から導き出される教訓は、異なる文化、考えを持つ企業が経営を一つにするM&Aの実施に当たっては、より事前の調査・評価を慎重かつ徹底的に行わなければならないということだろう。

それでもグローバル企業への道が必要

 リクシルにとって、ジョウユウの破たんはM&Aに対してより慎重に臨むきっかけになるだろう。もし、リクシルが買収した企業で同様の案件が続くようであれば、同社の経営の根幹そのものが揺らぎかねない。ただ、こうした失敗があったからといってグローバル化の動きを止めるわけにはいかないだろう。高齢化などによって国内の市場が縮小する以上、海外市場の開拓は多くの企業の課題だ。

 その際、日本企業は冷静にM&Aの意義を確認する必要がある。藤森氏はグローバル化の流れが変わることはないと強調している。そこに異論の余地はない。ただ、今回の不正会計が発覚した経緯を見る限り、M&Aに関して経営陣のさらなる注意が必要だろう。 

 M&Aには多額の資金、そしてリスクが伴う。それだけに、本業の強化を議論の土台においたうえで、M&Aの意義、実施後の経営管理力も十分に検証すべきだ。企業がグローバル市場でのシェアを拡大するために、M&Aは不可欠な発想だ。それを実行していくためには、表面上の数値等のみに注目するのではなく、買収先の文化、経営陣の人となりなど、調べられるすべてのことを徹底的に洗い出すしかない。反対にいえば、そうした当たり前のことを徹底することによってのみ、ガバナンスの強化、そして企業本来の成長が可能になるといえよう。
(文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授)

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