「Thinkstock」より
CCRCとは「Continuing Care Retirement Community」の略で、仕事をリタイア後、健康なうちに別の地域に移り住み、人生を終えるまでそこで暮らす、高齢者向けの共同体のことだ。
アメリカでは、老後の暮らし方の一つとして、すでに市民権を得ているという。日本でも、その仕組みを構築しようという構想が「日本版CCRC」である。
すでに、増田元総務大臣を座長に、政府の「日本版CCRC構想有識者会議」が発足しており、5月に全都道府県・市町村を対象に意識調査が行われた。その結果、全体の11.3%に当たる202の地方自治体が、「日本版CCRCの誘致を検討したい」と前向きに回答したという。
急浮上した「日本版CCRC」という新語をめぐって、中高年の間では、「仕事をリタイアした後に地方居住や田舎暮らしをしたいか?」「自分にそれができるか?」と盛り上がっている。
「田舎暮らし」は決して安上がりではない
年を取ってからどこに住むか、というのは大きな問題だ。「住み慣れたこの町にずっと住みたい」「出身地にUターンする」という人もいれば、「豊かな自然の中で暮らしたい」「北海道でスキー三昧だ」「暖かい沖縄がいい」など、人それぞれに期待や希望がある。
中には、海外移住を選択肢に入れる人もいる。「将来、絶対に食糧危機になるから、農村に移住する」という人もいるだろう。
3~4代前から都会に住んでいて地方には親戚すらいないなど、田舎の事情に明るくない人は「物価が安い田舎なら、年金だけで暮らせる」と思うかもしれない。もちろん、ケース・バイ・ケースだが、それはなかなか厳しいものがある。
例えば、古民家を借りて住居費が月1万円で済んだとしても、田舎暮らしには都会ではかからなかったコストが発生したり、同じことをするにも逆に都会より高くつくことが、結構あるからだ。
例えば、交通費だ。地方は完全な車社会なので、車がないと「通院するたびにタクシーなどで2000円以上も飛んでいき、薬代より高くつく」ということもザラにある。しかし、たとえ軽自動車でも車を持つと、トータルではさらにコスト高になる。
以前は安かった軽自動車税は、4月から増税となった。「田舎暮らし」について、メディアでは「都会より不動産が安い」という点ばかりが強調されているが、人は不動産だけで暮らしていくことはできない。