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「ココロに効く(かもしれない)本読みガイド」山本一郎・中川淳一郎・漆原直行

『絶歌』と版元の太田出版は、ただの外道である いまだに悲劇の主人公ぶる幼稚な酒鬼薔薇

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 オレが落合氏と会ったのは10年の春だ。とある雑誌の創刊記念パーティに呼ばれ、そこで落合氏がスピーチをした。この時、「あぁ、こいつか……」と嘆息した。その雑誌の創刊号にはオレも寄稿していたのである。だからこそ創刊記念パーティに参加したのだが、まさかこいつが関わっているとは……、と思い、もはやこの雑誌に関わったことを後悔し、オレの書いた原稿はなくしてほしいと思ったほどである。

 理由は一つだけ。

 オレの婚約者は、落合氏が編集した『完全自殺マニュアル』のもっとも推奨した通りの方法で自殺したからである。

 死んだ後、書棚を整理していたらこの本が出てきた。遺書には「私が仮に脳死状態だった場合は延命措置などしないでください」と書かれていた。『完全自殺マニュアル』では首吊りについては「首吊り以上に安楽で確実で、そして手軽に自殺できる手段はない。他の方法なんか考える必要はない」とあり、苦痛が少ないと記述されてある。

 数日間彼女を探し続けた末に、とある大学のキャンパス内の朽ちた小屋で彼女の首吊り遺体を見た瞬間、オレは悶絶した。しかし、消防・警察を呼ばなくてはいけないので呼んだ。そこからの事情聴取と第一発見者ならではの殺人者扱いに加え、警察署での司法解剖も含め「なんで死ぬのをオレは避けられなかったのだ」という痛恨の後悔と、最も愛した人間を失ったこの絶望感。本当に後追い自殺をするつもりになり、彼女が愛読した『完全自殺マニュアル』を再度読んだほどである。

 しかし、連日誰かが私の元を訪れて徹底的に酒を飲ませグデングデンにさせ、そのまま寝させるという展開を施してくれたがゆえに、なんとか一人で絶望する時間は減らすことができた。

 とにかく友人達はオレを自殺させないようにすべく、毎日何らかのかたちで接触を仕掛け、時間をつくらせてくれた。その期間、本当に仕事はできなかった。毎日毎日自殺されたことを悔い、なんでその予兆に気付かなかったのかを悔恨し、最寄駅のホームに立つとやってくる電車に飛び込んで死ぬことしか考えない。ないしは、自宅のドアノブにタオルをかけて首吊りをすることだけを考え続ける。

 なんでこんなに美人で性格がよくかわいいだけの彼女が死ななくてはいけなかったのだ――毎日このことを考え続けては、彼女への思いをキーボードに打つ。しかし、この作業はわずか半年で終わった。理由は、オレと彼女の5年間の思い出をすべて書き尽くしてしまったからだ。最も愛する人が死んだ場合、それまでの共通体験を書き尽くしたらもはやそれ以上は書けない。もはや思い出は増えないからである。

 彼女が死んだのは鬱病のせいである。それは間違いない。『完全自殺マニュアル』があったから死んだワケでもないのはわかっている。だから落合氏と鶴見氏に文句を言うのは筋違いであるのはわかっている。だが、死なれた人間としては、自分を責めるのに加え、なんらかの外的要因にも文句を言いたくなるものだ。

 そんな状況での前出のパーティだった。新雑誌創刊を高らかに宣言する落合氏。皆が祝福の声をあげ、敏腕編集者である落合氏の周囲にはさまざまな人が寄ってきて祝福をする。その輪が途切れたその時、オレは落合氏の元に寄り、こう言った。めでたい席での非常識な行為であることは認識している。

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