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清水和夫「21世紀の自動車大航海」(6月23日)

セダンの常識を変えた?ホンダのレジェンドに隠された最新技術をサーキットで体感!

文=清水和夫/モータージャーナリスト
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セダンの常識を変えた?ホンダのレジェンドに隠された最新技術をサーキットで体感!の画像1ホンダ・レジェンド(「ホンダ 公式サイト」より)
 本田技研工業(以下、ホンダ)の高級車「レジェンド」が誕生したのは、私が自動車業界に足を踏み入れてすぐのことだった。軽自動車や大衆車から車作りを始めたホンダが、大型高級車を手がけるまでに成長したのだ。それ以来、レジェンドはホンダのフラッグシップモデルとなったが、ビッグセダン市場では欧州車が人気で、日本車は影が薄い。

 それでも、ホンダはホンダらしい高級車を模索し続け、レジェンドの先代モデルには「SH-AWD(四輪駆動力自在制御システム)」という先進的な技術を搭載し、グランドツーリングカー(GTカー)のようなキャラクターを与えた。

 ホンダの志は理解する。しかし、レジェンドはスタイル的には保守的な高級車にしか見えず、残念ながら中身で勝負せざるを得なかった。しかし、今度こそレジェンドは生まれ変わることができるかもしれない。

 新型レジェンドに搭載されたのは、伊東孝紳前社長が推進していた3モーターハイブリッドシステムだ。「SPORT HYBRID SH-AWD」と呼ばれるこのシステムは、DCT内蔵モーターと、リアのツインモーターユニットからなる。

 重要なのは、モーターの数ではない。リアアクスルとモーターで駆動するAWDでありながら、左右のモーターが異なる駆動力を発揮できる点だ。それぞれのモーターの出力は37PS、73Nmで、これらを同時に駆動させると146Nmのトルクを発生するAWDに変身する。

 この左右独立モーター四駆の考え方は、次期「NSX」ではフロントアクスルに採用される。環境技術と運動性能が一体となった新しいコンセプトは、要注目だ。

 しかし、左右のモーターが独立駆動する技術が威力を発揮するのは、旋回の時だ。外側のモーターを加速し、内側を減速すると、リアステアのようにリアアクスルで旋回モーメントを作り出せる。

 この時、内側のモーターは電力を作り、その電力は外側のモーターの駆動に使える。つまり、旋回モーメントを自在に操りながら、電気エネルギーを伝え合うというわけだ。

 非常に美しい話だが、はたして理屈通りに走れるのだろうか。レジェンドの車重は2トンだ。いかなるハイテクも通用せず、せっかくの運動性能に大きなマイナス影響を及ぼすのではないか。そのハイテクサルーンを茨城県の筑波サーキットで走らせる機会を得たので、いろいろ試してみることにした。

 スタッフが見守るピットロードを後にして、第一コーナーをゆっくりとターンインする。リアのモーターベクタリング(外輪増速)と、モーター四駆の様子を観察したが、SH-AWDの狙い通り、確かによく曲がる。

 タイヤが温まるのを確認して、スピードを上げた。第一コーナーで試したように、ターンしてクリッピングポイントに差しかかるあたりで軽いアンダーステアが発生した。ここでスロットルを踏み込むと、大きな車体がリアから旋回する感じがつかめた。「あっ、この瞬間がSH-AWDなんだ」と実感した。

セダンの皮をかぶったスポーツキャラ

 先代のSH-AWDはメカニカルタイプだったが、新型はモーターなので反応が驚くほど早い。そのおかげで、大幅なアンダーステアを覚悟したヘアピンカーブも、最小限でクリアできた。

 ベストラップを狙ってペースを上げていく。効率のよいコーナーリングのために、アンダーを出さないようにターンインする。モーターベクタリングが備わっているので、コンベンショナルなAWDよりも早いタイミングでスロットルを踏むことができる。

 つまり、早期に加速状態に入れる、というのが正しい認識だ。通常ならプッシングアンダーステアが出るタイミングでも、レジェンドはニュートラルにコーナーを脱出できる。

 シートや内装は普通のセダンだが、実際に乗ってみると面白い性能を持ち合わせていることを実感し、「ホンダは、これを作りたかったのだ」ということが理解できた。新型レジェンドは、セダンという羊の皮をかぶったスポーツキャラだったのである。
(文=清水和夫/モータージャーナリスト)

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