東電の社外取締役に就いた理由

 長谷川氏のお膝元である武田薬品は、15年3月期決算の最終損益が1430億円の赤字となった。糖尿病の治療薬「アクトス」をめぐり、アメリカで起きた集団訴訟により、和解金や訴訟の関連費用として3241億円の引当金を計上したためだ。同社は1949年の上場以来、初めての赤字となった。

 会長兼CEO(最高経営責任者)だった長谷川氏は、今年4月にCEOを外れて会長専任となった。そして、東京電力の社外取締役に、6月末の株主総会を経て正式に就任する。同ポストは、同友会が押さえている数少ない指定席だ。

 経団連は、東日本大震災で原子力発電所事故を起こした東電の経営陣の人選をめぐり、米倉会長が首相官邸と衝突した。経団連は、東電擁護の立場から、迷走を繰り返す菅直人首相(当時)を糾弾、官邸とのパイプが途絶した。

 漁夫の利を得たのが同友会で、東電の役員は同友会系経営者が占めた。數土 文夫会長(JFEホールディングス相談役)は元副代表幹事で、藤森義明社外取締役(LIXILグループ社長)は前副代表幹事だ。

 社外取締役だった小林氏が同友会の代表幹事に就いたため、後任に長谷川氏が座った。同友会の代表幹事と東電の社外取締役のポストが入れ替わったことになり、わかりやすい“たらい回し”人事である。

 數土会長の後任に、長谷川氏が浮上しているとの見方がある。東電のトップ人事は、政治力学で決まる。安倍政権とのパイプを太くした経団連が、東電の会長獲りに動くのは間違いない。榊原氏が率いる経団連と小林氏が率いる同友会が、東電会長をめぐってバトルを繰り広げることになりそうだ。

 武田薬品の巨額赤字転落は、長谷川氏の経営者失格を意味している。東電会長のポストなど望まないほうがいい。
(文=編集部)

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