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マック元社長に潰されかけたリンガーハット、批判&反対殺到の戦略断行で鮮やかな復活

文=福井晋/フリーライター
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 かくして米濱氏が国産野菜100%採用構想を社内で打ち明けたのは、08年9月下旬に行われた定例の役員合宿の席上だった。案の定、役員たちは一様に反対した。「輸入野菜より高価な国産野菜を採用したら、コストを吸収できない」「価格転嫁すれば、さらに客足が遠のく」など、もっともな反対意見が相次いだ。それでも米濱氏の決断は揺るがなかった。

 米濱氏はその時の心境を「日経レストラン」(日経BP社/10年3月4日号)で次のように語っている。

「兄たちと始めたこの商売がどうしてここまで大きくなったのかと考えたら話は簡単。新鮮な国産野菜のみを使い、とにかく『おいしい』ちゃんぽんをお客様に提供してきたからだ。だったら、もう1回原点に戻ればよい。もちろんコストや調達など不安要素を数えたらキリがない。だから、『ごちゃごちゃ言っていないで、とにかくやれ』と役員たちの反対を押し切った」

国産野菜調達への挑戦

 当時、ちゃんぽんに使っていた野菜7品目のうち、国産はキャベツ(全量契約栽培)とモヤシ(自社栽培)のみ。後の5品目は中国産の野菜を現地で冷凍加工したものを輸入していた。中国産野菜は安全面の懸念に加え、野菜は冷凍すると芯がしおれてしまう。そのため、冷凍野菜では生鮮野菜特有のシャキシャキ感と旨みが出ない。

 そこで米濱氏の厳命を受けた商品開発部門は生鮮野菜特有のシャキシャキ感と旨み、色合い、スープとの相性などちゃんぽんに合う国産野菜を選定するため、50品目以上の試食を繰り返した。その結果、キャベツ、モヤシ、ニンジン、コーン、タマネギ、青ネギ、オランダサヤエンドウの7品目をちゃんぽんの定番野菜に決めた。

 次の問題は、これら国産野菜の通年調達だった。当時の年間必要量はキャベツ6000t、モヤシ4000t、ニンジン400t、コーン200t、タマネギ1000t、青ネギ400t、オランダサヤエンドウ200tの合計1万2200tだった。
 
 キャベツとモヤシ以外は、すべて新規調達しなければならなかった。例えば、国産コーンは当時年間約6000tが流通していたが、販売先はほとんど決まっていた。そんな既存市場で200tものコーンを調達できるわけがなかった。オランダサヤエンドウに至っては、需要が少ないため、当時の国内生産量はわずか50tしかなかった。和歌山市を中心とした農家が細々と栽培しているだけだった。

 このため、国産野菜調達プロジェクトチームは北海道から九州まで100カ所以上の産地を駆け回り、契約栽培してくれる農家を探し続けた。そうした苦労の末、全国15道県・40カ所の産地を確保できた。また、野菜は産地ごとに収穫時期が異なるので、定番7品目を通年で安定調達するための産地リレーも独自に構築した。

 こうした調達システムをわずか1年でつくり上げ発表したのが、再値上げと国産野菜100%採用宣言だった。これで客足が戻らなければ万事休す。社員の口からは「これでこけたらもう立ち直れない、無理を承知で引き受けてくれた契約農家にも顔向けができないなどの声が漏れ、期待感より悲壮感が漂っていた」とリンガーハット関係者は振り返る。だが、それは杞憂に終わった。

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