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“ジリ貧”キヤノン、巧妙な御手洗会長の極秘作戦成功 電光石火で世界トップ買収の狙い

文=福井晋/フリーライター
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 加えて深刻なのが、デジカメ事業の衰微化だ。スマートフォン(スマホ)の普及に伴い、コンパクトデジカメ(コンデジ)市場がここ2年で半分に縮小。さらに、高機能であるがゆえにスマホの影響を受けにくく、景気低迷時にも成長を続けてきたレンズ交換式デジカメも減少に転じ、14年12月期のデジカメ事業売上高は前期比11.5%もの減少となった。好調なインクジェットプリンタ事業を含めたイメージングシステム部門全体でも同7.3%減と落ち込み、同部門は営業利益も4期連続の減益となった。

ジリ貧確実のキヤノンの打開策

 これまで第3の柱と位置付け、育成に努めてきた医療事業も、現在の売上高は数百億円規模。1000億円台にブレークスルーする兆しは一向に見えてこない。

 14年12月期末で8446億円という潤沢な純資産を持つ優良企業の同社ではあるが、このままではジリ貧が明らかで、経営陣が危機感を抱くのは当然といえる。

 医療機器より先に収益貢献できる新規事業は何かと、同社が血眼になって探してもおかしくない状況だ。

「そんな中で浮かび上がってきた新規事業が、ネットワーク監視カメラだった。デジカメ技術の応用で生まれた商品なので、当社既存経営資源との相乗効果も高い」(キヤノン関係者)といわれる。

 かつて監視カメラの用途といえば街頭や商業施設内などを監視する防犯カメラや、河川の水量などを監視する防災カメラが大半だった。これらの監視カメラは現在、国内に約500万台設置されているという。

 この用途を一挙に拡大させたのがアクシスのネットワーク監視カメラだった。複数の監視拠点を遠隔地から一元監視したり、監視映像を解析したりできるようになったからだ。

 例えば、スーパーマーケットなどの小売店では、監視カメラの映像解析により来客人数、客がよく集まる棚や時間帯、在庫切れチェックなどが本部で一元的に行える。したがって、来客人数に合わせて即座に店員の配置を変えたり、売れ筋商品を補充したりといった店舗運用効率化も可能になった。

 業界関係者は「それまで防犯・防災に限られていた監視カメラの用途制限を取り払ったのが、アクシスの功績。今後は、さまざまな用途開発により、監視カメラ市場は急成長してゆくだろう」と期待する。

 実際、国内では20年の東京五輪開催に向けてネットワーク監視カメラの需要急増が予測されており、海外ではテロ対策のために公共施設や交通機関で導入が進んでいる。「ネットワーク監視カメラは久々に出たお宝市場」と指摘する向きもあり、自分で有望な新規事業を創出できないキヤノンは、このお宝市場に飛びついた格好だ。

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