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東芝、深刻な内部崩壊 権力闘争と部門間潰し合いで、自慢の危機管理制度が機能せず

文=伊藤歩/金融ジャーナリスト
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「数年にわたる工事は、極論すれば日々総原価が変化するといっていい。施主からの仕様変更指示は頻繁だし、資材や人件費が上がったり、資材の搬入日を間違えて必要な日まで倉庫を借りなければならなくなったりする場合もある。工事をやっている途中で新しい工法が開発され、原価が下がることもある。原価上昇分の一部を収益に転嫁させてもらう施主との交渉を最後までやることもある」(大手デベロッパーのビル開発担当)。

 日々めまぐるしく変動する原価の管理は基本的に現場に任せざるを得ず、本社側が吸い上げるのは月次決算の時だが、それも現場側が本社に上げなければ本社側も認識できない。本社が認識できないものを、監査法人が認識できるわけもない。

金額も少額で監査法人が責任を問われる可能性も低い。それなのに、ここまでの大騒ぎになっている。それが今回の東芝の不適切会計問題なのである。

影響度がまったく違う過去の事例

 過去の大型粉飾の事例と比べても、今回の東芝のケースは軽微だ。刑事事件に発展したカネボウの場合は、純資産5億円の会社が2000億円を粉飾したのだから、これはケタが違う。

 また、オリンパスは問題発覚以前の決算期に、過去の損失をカモフラージュするために別の投資案件を使って巨額の損失処理を実施していたため、正規の取引内容で修正をかけた。その結果、発覚直前期の11年3月期は、1668億円弱の純資産が1155億円へと569億円、およそ3分の1減り、発覚後最初の決算期である12年3月期末時点では480億円へとさらに減った。従って、発覚によって債務超過にこそならなかったものの、純資産は7割強減ったことになる。

 もっとも、本来1000億円の損失処理をすべきだった01年3月期の純資産はもともと1922億円だったので、純資産が半減するレベルの粉飾だったといえる。刑事事件化したのはトップ主導の損失隠しであったこと、そしてそれが10年以上にわたっており、カモフラージュのために別の投資案件まで仕立てたというその悪質さゆえだ。

 06年に発覚した日興コーディアル証券の粉飾は、社内の権力闘争から情報がメディアにリークされ、世間の知るところとなった。589億円の経常利益を180億円水増ししていたというもので、投資子会社を意図的に連結対象から外す手口の悪質さは、市場関係者からは「ライブドア事件よりもはるかに悪質」という声も出たが、なぜか刑事事件化しなかった。

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