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東芝、深刻な内部崩壊 権力闘争と部門間潰し合いで、自慢の危機管理制度が機能せず

文=伊藤歩/金融ジャーナリスト
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 東芝の場合、発覚直前の時価総額は2兆円を超えていたので、粉飾自体へのペナルティが、ざっと計算すると1期あたり約1億3000万円なので、5期すべてが修正対象となった場合は6億5000万円。このほかに修正対象になり得る10年以降の社債発行総額が3500億円なので、2.25%とすると78億7500万円。合計で約85億円強になるが、14年12月末時点で現預金が2102億円もあるので、どうという金額ではない。

今回の東芝の問題発覚のきっかけは、外部機関である証券取引等監視委員会(SESC)への内部関係者による情報提供だが、同社がさほどダメージを受けることはないとタカをくくったからこその情報提供だったのではないかとすら思える。

株主が向けるべき怒りの矛先

 東芝は先進的な内部統制を構築、内部通報制度も充実している企業として、専門書でも取り上げられてきたが、その同社自慢の内部通報制度が今回は機能しなかった。内部関係者から通報を受けたSESCの開示検査課が調査に赴き、内部調査を促したという流れだということは、内部通報機関が内部通報を無視したためにSESCに駆け込んだのか、内部通報機関を飛び越していきなりSESCに駆け込んだかのどちらかということになる。

 このあたりが実際にはどうだったのかについては、日経によれば7月21に公表されるという第三者委員会の報告を待たねばならない。だが、公表までは門外不出のはずの第三者委の調査経過がメディアに流出し、あちこちの部署から続々と不正の可能性が飛び出してくる。この状況を見ると、各部門がいまだに互いに「刺し合っている」とする各種報道は説得力を帯びてくる。

 すでに会員制情報誌の「選択」(選択出版)と「FACTA」(ファクタ出版)が、今回の騒動は西田厚聰相談役と、佐々木則夫副会長の確執が原因であると報じている。例えば「FACTA」は、発端は西田氏側のリークであり、佐々木氏側が刺し返したとしている。

 あくまでこの報道が事実であることを前提にすれば、東芝の収益力からすれば軽微な今回のケースで、IHI以上の処分を余儀なくされることはないと考え、無邪気にアクションを起こしたとしてもなんら不思議はない。駆け込まれた側のSESCは、金額の多寡に関係なく不正はただす使命を持つ組織である。リークの動機がなんであるかはどうでもよく、より精度の高い会計処理を求めるだけだろう。

 だが、権力闘争の煽りを食らった株主こそ、いい面の皮だ。東芝の株価は7月9日午前9時半時点で367.3円。公表直前からの下落率は28%である。東芝幹部も自社株式は保有しているが、役員である限りインサイダー規制に抵触し基本的に現金化はできないという点では、一般の株主に比べ、株価に無頓着でいられる。

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