
日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死ぬといわれる。実際、日本人の死因の1位は1981年から変わらずがんである。厚生労働省の発表によると、死亡原因の30%は悪性新生物(がん)となっている。
がんでの死亡率を減らすためには、がんの早期発見・早期治療、治療方法の開発、治療技術の向上などが必要となるが、新しい治療法や技術は一朝一夕に生み出されるわけではない。つまり、早期発見・早期治療が何よりも重要といえる。
だが、がんの早期発見・早期治療を否定する見解も根強い。その第一人者ともいえるのは、慶応義塾大学医学部の元講師で近藤誠がん研究所所長の近藤誠医師だ。近藤医師は、「死に至るがんはほとんど転移がんだが、そもそも転移がんは早期発見しても治せない」「転移しないがんは早期発見をしなくても、手術や放射線治療によって治療が可能」として、早期発見するための検査そのものを否定している。新潟大学医学部の岡田正彦教授も、「長生きしたければがん検診は受けるな」と主張する。
さらに、手術や抗がん剤による治療で、かえって寿命を縮める可能性があるとして、がん治療にも疑問を投げている。
確かに、発見しても治癒が困難ながんはある。また、抗がん剤や放射線治療の副作用によって苦しんだり、時には死に至ることもある。
しかし、早期発見によって生存率を高めることができる種類のがんがあることも事実だ。つまり、あらゆるがん検診が有効とはいえないが、受けたほうがいい検診もあるというのが筆者の見解だ。また検診を受ける際には、仮にがんにかかっていたとしても、発見できる確率は60~70%程度であることは知っておくべきだろう。特に肺がんやすい臓がん、胆道がんなど、治癒可能といわれているがんを早期発見するのは困難だ。
運よく検診によって早期発見できて完治している人も多数いるが、確実に発見できるわけではないのだから、定期的に検診を受けなければ意味がない。また、ほとんどのがんは、末期になるまで自覚症状がなく、自覚症状が出た時には手遅れになっている可能性が高いので、体調に不安がなくても必要と思われる検診は受けるべきだ。