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東京五輪、重大な“障害”浮上 たばこ規制強化を妨げるJTと財務省の“不可侵領域”

文=小川裕夫/フリーランスライター
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 JT株の大半は、いまだに財務省が保有しているため、JTは財務省の意向に逆らうことはできない。財務省という後ろ盾もあって、政治家にとってもJTは不可侵の聖域となっている。さらに与党・自民党にとってもたばこ農家は強力な支援団体のため、簡単にはたばこ規制に乗り出せない。

 税収面でのたばこの貢献も見逃せない。たばこは地方税収分だけでも年間約1兆2000億円もの巨額な財源になっている。市町村で金額は異なるが、税収が最も大きい大阪市で約291億円、2位の横浜市で約220億円、3位の名古屋市で約174億円となっている。

 IOCやWHOの提唱する受動喫煙防止条例を推進すれば、公共スペースをはじめ飲食店で喫煙することはできなくなり、公園や駅前広場など屋外での喫煙も厳しく制限される。必然的にたばこの消費量は減り、たばこによる税収も減少するだろう。税収に影響が及べば、行政が立ち行かなくなる可能性が出てくる。

 さらに、たばこ税は取りやすい税金で安定財源でもある。人口減少などで税収が落ち込む市町村にしてみれば、それを手放すことは難しく、わざわざ財務省を敵に回したくないという思惑もある。これが、たばこ規制を消極的にしている理由だ。なかには、東京都千代田区のように条例で路上喫煙を規制する自治体もある。千代田区の生活環境条例(通称:路上喫煙禁止条例)は2002年に制定されたが、この条例によって路上喫煙者は激減した。

 それでも五輪開催の決まった東京のたばこ規制は一向に強まらない。五輪誘致の立役者だった猪瀬直樹都知事(当時)は愛煙家だったこともあり、受動喫煙防止対策に消極的だったともいわれる。

 その後、14年に新たに就任した舛添要一都知事は厚生労働大臣を務めた経歴から、東京のたばこ規制には理解があり、就任後には規制強化を打ち出した。それでも「最近はトーンダウンしている」(松沢氏)という。舛添知事にしてみれば、国立競技場問題が紛糾しているときに、厄介な問題を増やしたくないとの思いがあるのかもしれない。

 だが、そうした事情は国際社会に通じない。IOCやWHOの決めたガイドラインを順守しなければ、東京五輪開催への影響は避けられず、早急なたばこ対策が求められる。

払拭されない「国営色」

 たばこ規制の機運が強まれば、JTや財務省の抵抗が予想される。1985年に専売公社が民営化されるかたちで誕生したJTは、政官財に大きなネットワークを張り巡らせている企業であり、これまでも何度もたばこ規制の危機を乗り越えてきた。

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