【「月刊サイゾー」立ち読みサイト「サイゾーpremium」より】
――サイゾー7月号では「グラドル・女優の生態学」特集をお届けしたが、これにちなんで、計3回にわたり「グラドル・女優の歌」をレビューしてみた。女優が表現の場の拡大する手段として、“歌う”ことを選択することは、もはや日常茶飯事。しかし、女優業で確固たる地位を築いているからといって、歌手として評価されているかといえば、現実はそんなに甘くない。が、その一方で隠れた名作が存在するのも確か。
本稿では、現在もなお現役で活躍する女優が発表してきた楽曲、また現役&引退も含めたグラドルの知られざる歌手活動の履歴をたどり、音楽ライターの協力を得ながら、彼女たちの“隠れた才能”を探っていきたい。

■安達祐実
「どーした! 安達」(1994年)
歌唱力:☆☆
黒歴史度:☆☆☆
まだあどけなさが残りまくる13歳のときにリリースした4thシングル。作詞を「あいにきて I・NEED・YOU!」でおなじみのGO-BANG’Sのボーカリスト・森若香織が担当、作曲/編曲をダンスミュージック界のプロフェッショナル・福富幸宏が手掛けており、当の本人は軽快なラップを披露。彼女が天才子役として知られるきっかけを作ったドラマ『家なき子』の続編の挿入歌として知られる「風の中のダンス」なる正統派ポップスの隠れ名曲も。これから20年後、映画『花宵道中』で壮絶なまでの濡れ場を披露することになろうとは。

■松たか子
「明日、春が来たら」(1997年)
歌唱力:☆☆☆☆☆
黒歴史度:0
歌い手としてのスキルは「アナと雪の女王」でお墨付きの松だが、97年の歌手デビューから、その片鱗はのぞかせていた。この曲は朴訥ともいっていいような歌い方ではあるが、とにかく“声”がいい。メロディと歌詞の清々しさ、屈託のない歌声の組み合わせは抜群である。「ヘタなくせに歌に手を出したがる女優が増えて困る。事務所の力が大きいと、強引に押してくるからなおさら」と頭を抱えるレコード会社上層部からは、「松たか子のような自然体のシンガー然とした佇まいがいい」と彼女の歌手活動は音楽業界からも評価が高い。