スターバックスのドリップコーヒー
25名ほどのクラスで1時間半ほど話していただき、質疑応答が30分ほど。いつものように議論活発で濃密な時間となった。
「スタバにはマニュアルがない、と言われますが、そんなことはありません。コーヒーの入れ方などについて、つまりオペレーション・マニュアルはしっかりあります。しかし、サービス・マニュアルというものがないのです。その代わりに『Just Say Yes!(できませんとは言いません)』という標語があり、道徳、法律、倫理に反しない限り、お客様が喜んでくださることは何でもして差し上げるというのが、世界中のスタバの方針なのです」(岩田氏) スタバの店員のほとんどはアルバイトだが、彼らは「パートナー」と呼ばれ、本社は「サポート・センター」と称される。
「言葉って、とても大切なんです。スタバの離職率は、パートナーも含めてとても低い。それはスタバの経営が、チェーン店であるにもかかわらず、マニュアルではなくミッションをベースにしているからです。スタバは『感動経験産業』として、仮想競合としてはリッツ・カールトンやディズニーリゾートを想定しています」(同)
ちなみにこのスタバのミッションは同社のHPに掲載されているので、興味のある方は参照していただきたい。
岩田氏の講義では、米国スタバ本社創業者でCEOのハワード・シュルツ氏との会見譚などが語られ、とても興味深かった。岩田氏が退任してからもスタバは順調に日本で業績を伸ばし、5月には鳥取県に出店し、全都道府県に展開するに至っている。鳥取店のオープンには1000人以上の客が並び、大きく報道された。店の総数は7月現在で1111店。
米国本社による完全子会社化の意味
順風満帆に見えるスタバであるが、1000店の大台を達成して次の段階への飛躍を虎視眈々と狙っているようにみえる。それは、最近の資本移動からもうかがえる。
今年3月に米国スタバ本社は日本法人を公開買い付けによって完全子会社化した。そもそも日本法人は、日本のサザビーリーグ社との合弁で1996年に1号店を開業して、01年10月には大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場(スタンダード)に上場した公開会社だった。