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碓井広義「ひとことでは言えない」

連ドラ『民王』が、なんだかスゴいぞ!

文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授
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 7月に始まった、夏の連続テレビドラマ。恋愛モノから企業モノ、リメイクモノから新作まで、さまざまな趣向が並んでいる。そんな夏ドラマの中から、猛暑に負けない元気が出る良作を選んでみた。

直球勝負の青春ドラマ、『表参道高校合唱部!』

“オリジナル脚本のドラマ”と聞けば、どこか応援したくなる。池井戸潤の小説が原作の『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)も、往年の人気アニメを実写化した『ど根性ガエル』(同)も結構だが、ゼロから物語を生み出そうとするオリジナル・ドラマは、テレビならではの楽しみだからだ。

『表参道高校合唱部!』(TBS系)の主人公は、香川県小豆島から東京の私立高校に転校してきた真琴(芳根京子)。親が離婚し、母親の実家で暮らすことになったのだ。とにかく合唱が好きで、廃部寸前の合唱部の再建に奔走する。

 初回を見て驚いたのは、連ドラ初主演という芳根が示すポテンシャルの高さだ。ヒロイン生来の明るさや意志の強さだけでなく、感情の細やかさまで表現している。何より、単なる表層的な美少女ではなく、地に足のついた骨太な少女像を体現している点に注目した。

 舞台となる高校には、生徒を「一軍」「二軍」「圏外」などとランク付けするスクールカーストや、米映画『キャリー』(1976年公開)を思わせるイジメも存在する。しかし、ヒロインを際立たせるためのイジメ描写なら、やりすぎないほうが得策だろう。

 このドラマのよさは、まず劇中の歌に本物感があること。仲間と歌う合唱の楽しさが伝わってくること。また芳根をはじめ、森川葵、吉本実憂、志尊淳など“新たな波”を感じさせる若手俳優たちだ。ドラマと共に成長する彼らを見てみたい。

クセになりそうな変化球、『民王(たみおう)』

 猛暑に圧倒されたかのように、全体的にイマイチ元気がない今期ドラマ。そんな中で、思わぬ拾い物をしたような1本が『民王』(テレビ朝日系)である。話はなんとも破天荒で、時の総理大臣・武藤泰山(遠藤憲一)と、そのバカ息子・翔(菅田将暉)の心が、突然入れ替わってしまうのだ。

 2人は周囲に悟られないようごまかしながら、回復を待とうとする。だが、泰山の姿形となった翔は秘書官が書いた答弁を棒読み。しかも、まともに漢字が読めないため、野党からも失笑を買う。一方、見た目は翔だが傲岸無礼なままの泰山も、就活で訪れた会社で面接官を罵倒し、説教までしてしまう。

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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