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週刊誌の女子アナ“パンチラ写真”掲載は、なぜ許される?違法ではない?

文=編集部、協力=山岸純/AVANCE LEGAL GROUP LPC執行役・弁護士、渡部貴之/弁護士
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週刊誌の女子アナ“パンチラ写真”掲載は、なぜ許される?違法ではない?の画像1「Thinkstock」より
 先日、元タレントの田代まさし氏が女性のスカートの中を盗撮したとして、東京都迷惑防止条例違反容疑で書類送検されたが、最近は携帯電話やスマートフォンのカメラ機能を使った盗撮が増えている。

 もちろん盗撮は犯罪だが、週刊誌などではいわゆる“パンチラ写真”など、女性の芸能人やアナウンサーの下着や胸元がクローズアップされた写真が掲載されていることもある。読者の中には、「これは盗撮では?」「週刊誌のカメラマンは、なぜ逮捕されないのか」と疑問を持つ人もいるだろう。

盗撮は条例で規定されている

 そもそも、盗撮はどのような法律において犯罪とされているのだろうか。AVANCE LEGAL GROUP LPC執行役員の山岸純弁護士と榎本啓祐弁護士は、以下のように解説する。

「法律ではなく、各都道府県で定められている条例に、撮影に関する規定があります。一般的に『迷惑防止条例』と呼ばれているもので、東京都では『公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下、<東京都迷惑防止条例>)』の第5条1項本文に『何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない』とあり、同条2項に『公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること』と規定されています。違反して撮影をした者に対しては、同条例第8条2項において、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科す旨を定めています」

 各都道府県の条例では同様の規定があり、エスカレーターでスカートの下から女性の下着を撮影するなどの行為は、犯罪として処罰されることになる。

週刊誌のカメラマンが逮捕されない理由

 では、週刊誌のカメラマンが逮捕されない理由は、どういったものだろうか? これについては、実際に逮捕された例や裁判例がないことから、明確な理由は不明だが、現行法が制定された背景や条文の文言が想定していると思われる観点から

(1)「公共の場所」での撮影ではないため
(2)撮影される側の承諾があると考えられるため
(3)撮影行為にわいせつ性が認められないため

の3つが、法的に考えられる理由になるという。

週刊誌における女性芸能人の下着や胸元の写真は、撮影場所が記者会見やコンサートの会場である場合が多いと思われます。東京都をはじめ、多くの迷惑防止条例で、撮影が犯罪とされる場所は『公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において』などとされています。『公共の場所』の定義は曖昧ですが、過去の判例では、改正前の東京都迷惑防止条例に用いられた『公共の場所』の文言について、『道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所を指称し』『不特定かつ多数の者が自由に出入し、または利用することのできる施設または場所をいう』としたものがあります。

 記者会見やコンサートの会場は入場にチケットなどが必要であり、前述の定義では『不特定かつ多数の者が自由に出入し、利用することのできる』場所ではないと判断される可能性があります。これらを踏まえ、週刊誌のカメラマンは撮影場所が『公共の場所』には当たらないという理由から、条例による規制の対象ではないと考えられます」(山岸弁護士、榎本弁護士)

撮影される側もある程度想定している?

 また、(2)については以下のように解説する。

「犯罪の中には、被害者の承諾があることにより処罰されないものがあります。例えば、他人の物を盗む窃盗罪は、被害者の意思に反していることが成立の要件とされているため、盗まれることについて被害者の承諾があれば、犯罪は成立しません。週刊誌のカメラマンの撮影は、前述の通り、記者会見やコンサートの会場である場合が多いと思われます。そのような場所では、芸能人は各メディアの記者によってあらゆる角度から撮影されることが通常であり、身体を撮影される、また、下着などが写ってしまうことについて、ある程度当人の推定的な承諾があると考えられます。週刊誌のカメラマンの撮影に関しては、上記の理由から犯罪が成立しない、または成立しても違法性が過小である、ということが考えられます」(同)

胸元の写真は、あくまで本人撮影の副産物

 最後に、撮影のわいせつ性についてはどうだろうか。

迷惑防止条例で規制される撮影については、多くの場合『人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為』であることが要件となっています。 例えば、記念写真を撮影した際に偶然女性の下着が写り込んでしまっても、撮影行為は犯罪にはなりません。同様に、記者会見やコンサートの会場で芸能人を撮影しているカメラマンは、その下着や胸元を狙って撮影しているわけではなく、あくまで本人を撮影しようとしており、下着や胸元などは偶然写ってしまったものであると考えることができます。そして、撮影したものの中から、後に下着や胸元が写っているものを発見し、それを週刊誌に掲載しているとも考えられます。現在、児童ポルノは所持しているだけで処罰の対象となりますが、18歳以上の人物であれば下着や胸元などが写っている写真を所持、掲載しても犯罪にはならないため、週刊誌によるそういった写真の掲載自体は犯罪ではないと考えられます」(同)

 週刊誌のカメラマンが盗撮で逮捕されない理由について、法的な見地からは以上の内容が考えられるようだ。しかし、「それなら、自分も大丈夫だろう」などと安易に考えるのは危険である。また、上記のような犯罪行為に該当しない場合でも、意図的に隠れて他人を撮影する行為は、民事上の損害賠償責任の対象となる可能性があるため、軽はずみな行動は慎んだほうがいいだろう。
(文=編集部、協力=山岸純/AVANCE LEGAL GROUP LPC執行役・弁護士、渡部貴之/弁護士)

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