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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

財政破綻で起こる恐ろしい事態 物価高騰、失業者増、給与減…平時の緊縮財政はプラス大

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト

財政危機とは

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 財政危機とは、文字通り財政が危機的な状況に陥ることを指す。一般的には、国の財政状況が悪化し、国の信用が下がることで引き起こされる。国の信用が下がると、その国が発行する国債の価格が暴落することで金利が上昇する。金利が上昇すると、政府の資金繰りが困難になり、海外への資金流出が進むため、自国通貨が暴落し、対外債務の支払いが困難な状況に陥る。こうした負のスパイラルによって経済活動は混乱する。

 財政危機に陥った国が財政破綻を回避する策としては、緊縮財政が一般的である。具体的には、増税や資産売却等で歳入を増やし、公共投資や公共サービスの削減により歳出を減らし、財政赤字や政府債務残高を減らそうとする。しかし、緊縮財政は景気に冷や水を浴びせることになるため、過度に行うとかえって税収を減らして財政にとっては逆効果になる場合もある。

 また、財政危機に陥ると国債の信用が下がり、金利が跳ね上がることもある。こうなると、中央銀行が紙幣を増刷して国債を買い支える場合もある。これを「マネタイゼーション」と呼び、金利急騰を抑える効果が期待できる一方で、通貨の価値が下がるため、急激なインフレの危険を伴う。そして、自力では財政再建が困難となると、国際通貨基金(IMF)の支援を受けることになる。具体的には、IMFの管理下で極めて厳しい緊縮財政や金融引き締めの条件の下、一時的にIMFから金融支援を受けることになる。

 しかし、外部の支援を受けることなく看過すると債務不履行(デフォルト)に至る。こうなると、実際に約束した条件で国債の利払いや元本の支払いができなくなるため、債権者は支払い期限の延長や利息・元本の減免を余儀なくされる。これが財政破綻である。こうなると、預金の取り付け騒ぎや海外への資金流出から金融機関が破綻するため、政府が預金封鎖や資本規制を実施せざるを得なくなり、金融市場は大混乱に陥る。そして、財政破綻に陥ってしまうと、国際金融市場への参加の制限や、高い金利でないと資金調達が困難になり、対外的な経済取引を行う際にさまざまな支障を来すことを余儀なくされる。

近年の財政危機

 緊縮財政の最近の例を振り返ると、欧州債務危機の当初、PIIGS諸国(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)で緊縮財政一辺倒だったことが挙げられる。その結果、各地でデモが頻発するなど緊張が高まり経済活動が停滞したことで、より債務が増え、国債の利回りが高止まりした。そこで、ある段階から緊縮財政を緩め、経済成長にも目配りしたところ、各国とも景気に若干の明るさが戻り、ギリシャを除いて国債の利回りが下がるという効果が表れた。

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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