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大西宏「コア・コンセプトのビジネス学」

アップル、驚異の利益独占 スマホメーカー全体の9割 シェア1位のサムスン退潮鮮明

文=大西宏/ビジネスラボ代表取締役
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 一方、アンドロイド搭載スマホの市場は、肝心のOSは米グーグルに握られ、差別化できるのはハードに縛られてしまっています。しかも音楽コンテンツやゲームなどのアプリ販売のサービスでもメーカーによる囲い込みは不可能です。

「ヨコ」のシェアと「タテ」のシェア

 サムスンはライバルとの力関係、市場での販売のシェアを追求しましたが、まさにこれまでの液晶テレビの競争戦略でも同じです。これはいってみれば、同じメーカー同士で繰り広げられる「ヨコ」のシェアの争奪戦です。

 アップルが追求してきたのは、むしろ「タテ」、つまり設計から調達、製造、販売、アフターサービスといったビジネス・プロセスのなかでの支配力でした。基本的にはOSを握り、さらに利用目的を広げるコンテンツやアプリでも、iTunesやAppStoreに顧客を囲い込んでいるのです。

 タテの支配力を重視する戦略があからさまに見えてきたのは、対キャリア政策においてです。アップルは初期段階においては成長を犠牲にしても、キャリアを絞り、各キャリアにiPhone販売を重点化させてきたのです。日本ではソフトバンクが長らく独占販売し、アメリカではAT&Tとベライゾンに絞ってきました。

 そして世界を驚かせたのが、後にソフトバンクが買収する米国通信第4位のスプリントがiPhoneの販売権をアップルに求めた際に、公になった取引条件です。キャリアはiPhoneを扱うために、売れるかどうかに関係なく、4年間に少なくとも3050万台のiPhoneをアップルから購入しなければならないという契約だったのです。年間売上高約2.5兆円のスプリントが、総額1.5兆円でiPhoneを買わされたことになります。スプリントは会社の存亡を賭けて、iPhoneの販売権を獲得したのです。

 日本のKDDIがiPhone取り扱いでどのような条件を飲んだのかはわかりませんが、NTTドコモの場合、ドコモが売るスマホの4割をiPhoneにするという条件だったといもいわれています。

 現在、流通が巨大化し、加えて需要よりも供給力が上回っていることから、メーカーよりも流通の立場が強いというのが一般的ですが、買い手との交渉力で強い立場をアップルは築いてきたのです。競争優位の戦略で米経営学者マイケル・ポーターは5つの脅威について指摘していますが、アップルはそれを意識した戦略をとってきたのかもしれません。

 日本市場での独自の立ち位置を確保し、できるだけ直接競合を避けようという考え方をとる企業が増えてきたように思います。サプライチェーンやビジネスのプロセスで付加価値をどう取り込むのかという、「市場サープラス」の視点も広がってきています。アップルという企業を、そういったマーケティング視点でもう一度見なおしてみると、参考になる点がきっと見つかるのではないでしょうか。
(文=大西宏/ビジネスラボ代表取締役)

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