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中国経済、急減速ショック 中国系自動車メーカーの淘汰必至、外資系優位鮮明に

文=井上隆一郎/東京都市大学都市生活学部教授
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輸出で切り抜けられない体質

 
 過剰供給能力がある場合の対処方法は、海外に需要を見つけるということだが、集中豪雨的輸出、近隣窮乏化政策として国外から批判を浴びるものでもある。例えば70年代の日本産業はまさにそのような批判を浴びたものの、経済は成長を遂げ、世界経済の機関車となっていった。その後自動車産業をはじめ、多くの産業の対外直接投資が進行していった。鉄鋼、化学、繊維などの素材系、あるいはコモディティ(汎用製品)であれば、中国産業もそのような方向をさらに強めていくだろう。

 しかし同様の展開を自動車産業で行うのは、2つの要因から大変困難であろう。

 第1に、総じていえば中国の自動車産業に国際的な競争力は乏しいという点である。国際的な競争力のないものを受け入れる市場は、さらに発展段階の低い途上国市場であり、その規模は決して大きくない。

 第2に、国際競争力のある外資系メーカーは、一部を除きグローバル供給拠点として中国外の拠点をすでに配置しており、これらの稼働を調整して中国拠点の稼働を維持することは難しいという点である。

民族系メーカーの整理淘汰が生じる

 
 中国自動車市場は、将来的には年間3000万台を超過することが見込まれている。現在の水準に日本市場の販売台数がさらに上積みされる規模である。しかし中期的には、現在の水準にとどまる可能性が高い。そうなると、現在の生産能力、供給能力を前提にするなら、工場の稼働率が50%程度と大幅に低下することになる。この数字は平均値であり、当然メーカー間でこの稼働率にも大きな格差が生じるだろう。つまり、採算の取れる水準である70%以上を維持できる企業と、それができないだけでなく50%以下の水準にとどまる企業である。

 日系企業はおおむね維持が可能であろう。なぜなら、多くはこれまで設備投資を極力控えてきたし、海外市場への振り向けもその気になればまったく不可能なわけではない。一方、外資合弁と無関係な中国系企業は、すべて苦しい状況に追い込まれるであろう。

 実は中国政府の自動車産業政策の通奏低音として、「100社を超える乗用車供給企業の少数への整理」という考え方があるが、結果的に現在、それが初めて実現できる環境条件が整いつつある。しかし、それは中国政府の意図に反して、外資系の優位と引き換えというかたちになる。
(文=井上隆一郎/東京都市大学都市生活学部教授)

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