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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

骨粗しょう症の薬は無意味?骨が腐る危険?「寝たきりになる骨折」はこう防げ!

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

「骨密度の減少=寝たきりになる骨折」ではない

 米国の調査では大腿骨転子下骨折、大腿骨骨幹部骨折をはじめとする重大な骨折が、BP製剤の長期服用によって起きるケースは1%未満だそうです。この数字を見ると、多くの人は「デメリットもあるが、やはりメリットのほうがずっと大きい」と考えるかもしれません。

 股関節骨折などで寝たきりになる高齢者の急増は、解決すべき大きな社会的テーマです。その部分については私もまったく同感ですが、BP製剤によって解決できると考えることはできないのではないでしょうか。

 一般的に、「骨密度を上げる薬を飲むこと=寝たきりになる骨折をなくすこと」と考えている人が多いでしょう。骨が極端にスカスカになった怖い写真を見せられれば、骨密度を上げることが何よりも大事という発想になるのはやむを得ないことかもしれません。

 しかし「寝たきりになる骨折」が起きる原因は骨密度の低下だけではありません。骨折という結果は、転ぶという原因があって起こるものです。骨密度が高くても、階段に手すりがない家や床に段差がある家、タイルが滑る風呂、といった転びやすい環境にいれば、骨折のリスクは高くなります。
 

「リスクが50%減る」という話のとらえ方

「BP製剤を服用した患者は、服用しなかった場合よりも股関節骨折のリスクが50%減る」という結果が出た比較試験があったのは事実です。

 骨粗しょう症という病気は、90年代に骨密度計の普及と共にメジャーになった病気です。その当初は「BP製剤を大量に売らんがために、自然現象を病気にでっち上げようとしている」という非難にさらされました。それを封じるため製薬会社は資金を出してBP製剤の効果を測る比較試験を行ったのです。

 その結果、BP製剤を使用しなかった群では股関節骨折の発生が100人に2人だったのに対し、使用した群は100人に1人だったのです。読者の皆さんは、この結果を見て、「どんぐりの背比べ」と思われるのではないでしょうか。

 しかし、統計分析のマジックを使えば「リスクが50%も減少」ということになり、それがメディアを通じて拡散していったのです。こうした子供だましのようなトリックに騙されてはいけません。率よりも“実数”を確認してみるべきです。

骨折のリスクを減らすためにするべきこと

 骨粗しょう症の患者には、骨密度が低いから骨折のリスクが高まるということばかり頭にあって、軽い運動すらしなくなっている人が多いのも現実です。

 骨密度を上げるには、骨に刺激を与えると効果的であることは確認済みです。BP製剤自体も、実は骨に微弱な振動を与えれば与えるほど、吸着が良くなります。歩くことは骨に振動を与えることができます。体にも負担のかからない有酸素運動で、転ばないための筋力をつけることもできます。運動はしたくないという人も多いかと思いますが、歩くことで骨を強くしましょう。
 
 寝たきりの原因になる骨折は、骨密度が低いからなるのではなく筋肉量が低下して転びやすくなるからです。

「歩く=折れる」ではなく、「歩く=折れない」という基本的な考え方に、薬に安易に頼るのではなく筋力を高め、転ばない・骨折しない体づくりをしていきましょう。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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