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「ココロに効く(かもしれない)本読みガイド」山本一郎・中川淳一郎・漆原直行

ファミコン、キンケシ、85年の阪神優勝で盛り上がれる人たちが必ず甘美に浸れる本

文=中川淳一郎/編集者

 だが、実際は、「第二次ブリティッシュ・インヴェイジョン(イギリス歌手によるアメリカへの侵略)」に触発されたものであると著者は指摘する。「第一次」はビートルズやローリング・ストーンズに全米が熱狂(古臭い表現だな、コレ)した時のことを指し、「第二次」は80年代前半~中盤のことを指す。地元AM局がヒット曲の命運を握っていたのに対し、81年、アメリカでのMTV開局により、プロモーション・ビデオをイギリスのアーティストも流せるようになり、デュラン・デュランやカルチャー・クラブ、Wham!等がアメリカを席巻したことを指す。

 そんななかの「Band Aid 1984」である。これ以上イギリス勢に好き勝手させておくか! といった意図がアメリカのミュージシャンのなかにあり、白人と黒人が手を携え『ウィ・アー・ザ・ワールド』が誕生した、といったところだろう。

 本書ではほかにも、プリンスが『ウィ・アー・ザ・ワールド』のレコーディングに参加しなかった理由や、エルヴィス・プレスリーの腰の動きに関する記述もあり、現在の30代後半~60代ぐらいの人にとっては「あるある!」と膝を叩きたくなることだろう。

「70年代前半の人間の甘美な思い出」が詰まった本

 なお、著者の西寺氏と私は同じ年齢である。以前「73会」という会を麻布十番の中華料理店で行ったことがある。これは、73年生まれの出版業界や音楽業界、芸能界の男だけが集う会である。店を貸し切り、15人で飲み食いをした。参加条件は「73年生まれ」ということと「女人禁制」という不思議な会なのだが、西寺氏もここにいた。

 本書を読むと、あの過度に楽しかった数時間を思い出す。これまでに2回開催されたのだが、19時に開始し、終電間近の23時30分までの4時間半が一瞬にして終わる感覚だった。集った者は全員が違う出身地で、初対面同士もかなりいた。それなのに、似たような業界に属していること、そして「1973年生まれ」という共通点から、すぐに打ち解けられるのである。

 陳腐な言い方ではあるものの「初めて会った気がしない」という男たちだった。我々73年生まれは第二次ベビーブームのピークに生まれ、209万人も存在する。だからこそ、受験や就職活動では苦労したものの、人数が多いこともあり、共通の話題で盛り上がる妙な「盟友」の感覚があった。「73会」ではファミコンのことも語れば、「キンケシ」(キン肉マンの消しゴム)についても語るし、当然マイケル・ジャクソンとマドンナが同じ年に来日したこと、85年に阪神タイガースが優勝したこと、中学1年生の時に発生した、1つ年上の「鹿川裕史君いじめ自殺事件」の衝撃などを語り合った。そして、これからオレたちはどんな楽しい人生を送ろうか、といった前向きな話をガンガンするのだった。

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11:30更新
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