
月額980円で音楽が聴き放題の音楽配信サービス「Apple Music(アップル・ミュージック)」に続いて、動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」が9月、日本に上陸することになった。ネットフリックスの登場は、世界の動画コンテンツビジネスのモデルを根底からひっくり返すといわれている。
本稿では、それがどういうことかを解説したい。
「居心地が良い」
アメリカで誕生したネットフリックスは有料動画配信の世界最大手で、2015年6月時点のアメリカにおける加入者数は4230万人、全世界50カ国で計6560万人に上る。それらの加入者に対して、月額1000円前後(日本円換算/米国の平均月額課金は8.41ドル)で動画を配信している。
動画配信サービスとしては、日本では日本テレビ傘下のHuluが会員獲得で先行している。こちらは税抜きで月額933円、人気映画やドラマなど約1万本が見放題のサービスだ。ビジネスモデルの細部は違うが、Huluもネットフリックスも同様のサービスといっていい。画質は大画面テレビで見ても地上波とそん色なく、今のところは米国製のコンテンツ中心だが、Huluもネットフリックスもこれからは日本製のコンテンツを充実していくという。

基本的にネットフリックスは、米国ではCATVと競合するサービスとして成長している。日本では当初WOWOWやスカパー!と競合するはずだが、アメリカでネットフリックスユーザーに聞くと、配信コンテンツの充実しているアメリカのネットフリックスの場合、CATVよりも3つの点で「居心地が良い」という。
1つは、ドラマや映画を見ていても途中にコマーシャルが入らないこと。2つめに、お薦めの番組コンテンツをレコメンドしてくれ、それがなかなか加入者のツボを突いているので番組選択が楽でいいということ。そして3つめが、価格がCATVの半額ですむということ。結局、筆者が話を聞いた知人の家庭では、CATVを解約して現在ではネットフリックス中心にテレビを見ているという。
国内既存プレイヤーたちは劣位
日本ではどう発展するか未知数な点は多いが、仮にネットフリックスが順調に日本でも発展していくと、これから先、5年から10年後には配信される番組コンテンツ数はWOWOWとスカパー!を合わせたものと同じくらいになるだろう。当然、ネットフリックス側としてはそういう状況を目指すはずである。
WOWOWやスカパー!、J:COMのようなケーブルテレビ会社など国内既存プレイヤーたちにとって、厳しい戦いになることは間違いない。なぜなら、前述したネットフリックスの3つの強みにおいて、既存プレイヤーたちは劣位にある。