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鈴木貴博「経済を読む目玉」

2兆円のテレビ市場、本当に消失するかもしれない 快適すぎるネットフリックスの驚異

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開いた「パンドラの箱」

 経済学的にいうと、一度加入した視聴者にとって月額1000円の出費は埋没費用になる。「どうせ払っている」という前提なら、コマーシャルのある放送よりもない放送のほうが居心地が良い。今夏、地上波でもWOWOWでもHuluでも人気だった細田守監督の映画3作品も、放送時間しか見られないよりもいつでも見始められたほうが快適だし、コマーシャルが入らないほうが感情移入できるのは当然だ。

 そんなかたちで競争が深化すると、当初CATVや衛星放送の競合として登場したはずのネットフリックスは、最終的には地上波の競合になる。CATVが地上波の競合になってしまったアメリカでは、この事態への脅威が日本よりはるかに現実的に思えるはずだ。

 究極の展開を迎えると、現在の2兆円のテレビ市場は、ネットフリックスともう1~2社の寡占状態になった動画配信事業者が形成する6000億円市場との本格競争になる可能性がある。場合によっては2兆円市場が負けて、テレビとコマーシャルという一大産業が日本から消失する可能性がないとはいえない。

 すでにパンドラの箱は開いてしまった。月額980円のアップル・ミュージックに加入した知人によれば、もうCDを購入する世界には戻れないという。筆者個人でいえば、月額400円の「dマガジン」(NTTドコモ)に加入して150誌以上の雑誌が読み放題になって以降、店舗で雑誌を買うことがなくなってしまった。「週刊文春」(文藝春秋)も「週刊現代」(講談社)も「AERA」(朝日新聞出版)も「週刊SPA!」(扶桑社)も定額で、というか気分的には無料で読めるようになってしまったら、もう有料の雑誌購読に戻ることはない。

 ネットフリックスという黒船がどこまで本気で日本に上陸しようとしているのか。日本のテレビ界の未来は結局、彼らの本気度次第でどうなってしまうのかわからないという危うい岐路に来ている。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

●鈴木貴博(すずき・たかひろ)
事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『NARUTOはなぜ中忍になれないのか』『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』(ともに朝日新聞出版)、『戦略思考トレーニング』(日本経済新聞出版社)、『カーライル 世界最大級プライベート・エクイティ投資会社の日本戦略』(ダイヤモンド社)などがある。

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