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江川紹子の「事件ウオッチ」第36回

今国会最大規模の「安保法案反対デモ」 気になる二極対立のゆくえ

文=江川紹子/ジャーナリスト
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今国会最大規模の「安保法案反対デモ」 気になる二極対立のゆくえの画像1列島各地で、展開された安保法案反対デモ。今国会で最大規模となったが、この声を政治家はどのように受け止めているのかーー。(画像はANNニュースより)

 安全保障関連法案に反対する人々が各地で声を挙げている。国会前で行われた抗議行動は、これまでで最高の約12万人(主催者発表)が参加。民意が結集した、という評価の一方で、「デモなんてやってもムダ」と冷笑を浴びせたり、ことさらに過小評価しようとする人たちもいる。

 たとえば、維新の党の分裂騒ぎの渦中にある橋下徹大阪市長は「こんな人数のデモで国会の意思が決定されるなら、サザン(オールスターズ)のコンサートで意思決定するほうがよほど民主主義だ」とツイートした。できるだけデモの影響力を小さく見せたいのかもしれないが、あまりにも表層的な見方だ。

 各種世論調査を見ても、法案には反対の声が多い。とりわけ今国会での成立には、どの調査でも、反対が圧倒的多数となっている。8月30日には国会前以外にも、全国300カ所以上でデモや集会が開かれたという。デモや集会は、法案に対する国民の懸念や不安や憤りを具現化しているといえるだろう。

 橋下発言は、安倍政権との親密な関係ゆえでもあるだろうが、その根底には国民が政治に影響力を与えられるのは選挙での投票行動のみ、という発想がある。確かに、選挙は主権者としての最大の政治参加の機会だが、投票用紙はあらゆる政策についての白紙委任状ではない。さまざまな分野における主張や人物像を総合して、ある候補者や政党に投票しても、人々は特定の政策や政治の運営の仕方に異議を申し立てることができるし、為政者はその声に耳を傾けるべきだ。そういう政権運営を否定し、選挙での獲得議席がすべてというのは、民主主義をあまりに形式的に見過ぎて、その根幹を忘れた論議だ。

 たとえば読売新聞の調査では、ここ数カ月法案の内容について政府が「十分説明していない」という声が8割前後と高止まりしている。連日、国会審議が報じられ、安倍首相がテレビに出て長々と語るなど、説明には長時間を費やしているが、それでも国民は「十分説明してもらっていない」と感じている。当初の説明にはなかった事柄が国会での質疑などを通じて見えてきて、「肝心な点が、まだまだきちんと説明されていないのではないか」という不信の根強さを示しているといえよう。

 こうした不信感を置き去りにした政治がよいといえるだろうか。

 興味深いのが、産経新聞・FNNの最新の世論調査だ。8月15、16日に行われた調査には、こんな問いがある。

<中谷元防衛相は、国会で自衛隊の後方支援について、法律の上では「核ミサイルを運搬することは可能」と発言し、波紋が広がっています。安倍首相は「机上の空論だ」と説明していますが、あなたは、法律に核兵器の運搬禁止を明記すべきだと思いますか、思いませんか>

 これに対する回答は、「思う」が69.0%。「思わない」22.8%の3倍以上だ。

 政策判断として、首相が「やらない」「ありえない」と言ったとしても、口約束は当てにならない。安倍首相がやらなくても、別の政権になったら何が起きるかわからない--そう考えている人たちが多いということだろう。集団的自衛権の行使は憲法上認められないとしていた歴代政権の政府答弁も、「安全保障環境が変化した」との理由で、一内閣の閣議決定により覆された。この経緯を見てきた国民の多くは、せめて懸念する点は条文にしっかり明記してもらいたいと求めている。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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