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五輪エンブレム問題、仮にデザイン盗用でも「知らぬ存ぜぬ」で著作権侵害にならない?

構成=関田真也/フリーライター・エディター

サントリーのトートバッグは模倣

 ロゴデザインに模倣疑惑が浮上している佐野氏だが、著作権侵害と認定することはなかなか難しいようだ。

 また、佐野氏の作品には、五輪エンブレム以外にも東山動植物園のシンボルマークなど、部分的な位置や構図は微妙に違っているが、類似作品の存在が複数指摘されているデザインが多数ある。同一人物の作品でこうしたデザインが複数存在するという事実が、五輪エンブレムの依拠性・類似性の判断にも影響する可能性はあるのかは気になるところだ。

 これについて木村弁護士は「著作権侵害の認定は、あくまで著作物ごとになされるため、ほかに類似のケースがあるとしても、五輪エンブレムの著作権侵害の証拠にはならないと思います」と述べる。

 似たものを見てしまうと、「パクり(模倣)ではないか」という印象を抱きがちだ。しかし、単にアイデアなどが共通しているというだけでは、著作権侵害があるとはいえない。デザインは少なからずベースとなるものがあって、それを参考にしてなされることが多く、また、ロゴなどのシンプルなデザインは、どうしても似たものが存在する可能性が高くなる。微細な部分まで一致するといった事実がないと、著作権侵害はなかなか認められないようだ。

 そうすると、五輪エンブレムとリエージュ劇場のロゴは異なる点がいくつか認められるから、法律上は問題ないといえる可能性が高い。

 しかし、法律的な判断においては五輪エンブレムと関係ないとはいえ、サントリービール「オールフリー」のキャンペーンでプレゼントされていたトートバッグのデザインについて、トレース(既存のデザインをなぞること)があったことを認めたため、佐野氏の信用性に大きな影響を与えてしまった。

 こうした事実から佐野氏が、五輪エンブレムでも模倣する意識があったのではないかと疑われてしまうのは仕方ない。模倣を証明できなければ「クロ」とはいえないが、多くの人に与えた悪い印象は消えない。世界的イベントの象徴となる五輪エンブレムで、日本国民に負の感情を想起させ、ついには撤回という事態を招いてしまったという事実は重い。
(構成=関田真也/フリーライター・エディター)

【取材協力】
弁護士 木村佳生
東京弁護士会所属。ベンチャー企業支援をテーマに、起業支援、資金調達・M&Aサポート、紛争対応などに幅広く取り組んでいる。

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