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厚労省関連セミナーで「解雇指南」疑惑!理不尽な理由による解雇横行の危険

文=北健一/ジャーナリスト
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ブルームバーグ裁判

 「誤解」を招きかねない講演をしたA氏は、労働弁護士から経営側に転じた異色の経歴で、手がけた労働裁判は数多いが、最近で有名なのは、外資系通信社ブルームバーグが記者を解雇した事件である。

 ブルームバーグは中途入社で働くE記者(仮名)に2009年12月、「PIP(業績改善プログラム)を受けろ」と命令。スクープ記事執筆のノルマなど高いハードルを課し、わずかな「未達」を理由にE氏を解雇。E氏は新聞通信合同ユニオンに駆け込み、裁判を起こすが、その裁判で会社側代理人に就いたのがA氏だった。

 裁判は地裁、高裁ともE氏が勝訴し、「解雇は無効」という判決が確定。ところが会社側は、高裁判決前の13年1月、復職条件としてE氏に「記者には戻さない。給料半分で倉庫業務ではどうか」と提案。E氏が拒否したところ「2度目のクビ切り」を通知し、同年7月、「雇用契約がないことの確認を求める裁判」を逆に起こした。

 5月28日、東京地裁(鷹野旭裁判官)は、「E氏が(倉庫業務への復職という)提案に応じる法的義務はない」などとして会社の請求を退ける。E氏は記者会見で、「復職させないという会社の姿勢は間違っている。素直に認め、謝罪してほしい」と訴えたが、会社は控訴した。

 解雇から10年近く。3度の判決ですべて勝ったE氏は、それでも仕事に戻れない苦悩の日々が続く。

「俺的にダメ」でクビ

 解雇が不当だと裁判で決まっても、働き手を職場に戻さない。そんな非常識を合法に変えようという企みが、着々と進んでいる。それが「解雇の金銭解決制度」である。

 7月1日に閣議決定された「日本再興戦略改訂2015」(成長戦略の15年度版)で政府は、「予見可能性が高い紛争解決システムの構築」を盛り込み、「具体化に向けた検討を進め、制度構築を図る」とした(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/dai2_3jp.pdfの58ページ参照)。

 この紛争とは、解雇をめぐる会社と労働者の争いのこと。現在の法制度では、E氏のように労働者が裁判に訴えると、解雇理由が理にかなうかどうかを裁判所が見極め、解雇が不当なら「解雇無効」の判決が出される。勝利判決を得て、職場に戻った労働者も少なくない。経営者にとってそれは嫌だから、解雇された人が職場に戻る道を閉ざそうというのが、解雇の金銭解決制度(予見可能性の高い紛争解決システム)なのである。

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