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厚労省関連セミナーで「解雇指南」疑惑!理不尽な理由による解雇横行の危険

文=北健一/ジャーナリスト
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 E氏の代理人を務める今泉義竜弁護士は、「ブルームバーグ裁判は、会社側代理人が推進役になっている、解雇の金銭解決の危険性を示す事例でもある」と話す。

 また、解雇問題を扱った『中高年正社員が危ない』(小学館101新書)などの著書もある東京管理職ユニオンの鈴木剛委員長は、「『解雇の金銭解決』が導入されれば、『カネで済むから』と不当な解雇が誘発される。解雇が増えれば個人消費も冷え込み、経済にもマイナスだ」と警鐘を鳴らす。

 そんな悪い会社は少ないのではないかと考える向きもあるだろうが、実際の解雇は不条理の巣窟だ。独立行政法人・労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎統括研究員の調査によると、労働局が相談にのったトラブルのうち、「労働者個人の行為や属性にもとづく雇用終了」を見ると、「態度を理由とする」ものが圧倒的に多い(「個別労働関係紛争処理事案の内容分析」より)。

 労働者の態度を理由にした解雇とは、「仕事に誠意が見られない」「調和を乱した」「カラーに合わない」といったもの。店長から「俺的にダメだ」と言われ、クビにされたケースまである。

 A氏は13年11月、産業競争力会議に呼ばれ、「(日本では)実質的に、勤務成績や経営状態を理由とする解雇が禁止されているに等しい」と主張。解雇しやすくするための法改正まで提案した。だが、勤務成績や経営状態どころか、「態度が悪い」といった曖昧な理由での解雇が横行しているのは前述のとおりである。

「クビの値段」もダンピング

 しかも現在、解雇紛争の多くは金銭で解決している。現状で解雇の金銭解決の舞台となっているのは、労働局のあっせん、裁判所で行うが迅速に答えが出る労働審判、裁判での和解など。ところが、労働局あっせんは強制力がなく、労働審判も解雇無効の判断をほとんど出さないため、解決金の額が低くなりがちだ。

  厚労省の委託調査によれば、あっせんはわずか16万円、労働審判でも110万円(中央値=金額の多い順に並べた真ん中の額)。何の落ち度もない働き手が職を失う代償としては、あまりに安い。本格的に裁判で争えば、和解金額も230万円に上がるが(同)、再就職に時間がかかれば生活に窮する。

 前出・鈴木氏は、「組合が関わったケースからすれば、驚くほど低い。解雇の金銭解決が入れば、解決金がダンピングされるだろう」と指摘する。

 解雇の金銭解決制度は、来年の国会に出されようとしている。もしこれが通れば、日本中が「解雇特区」になり、ブルームバーグ解雇のような横暴が広がりかねない。
(文=北健一/ジャーナリスト)

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