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ROEブームのまやかし 利益をひたすら自社株買いに浪費する愚行

文=編集部
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 ROEの改善が国家目標になったことで、リーマンショック後に自社株買いをしてこなかった大手企業が次々と実施策を打ち出した。トヨタ自動車は3000億円を上限とする自社株買いでROEを15年3月期の13.9%から16年3月期に14.2%へ高める。3メガバンクのなかで唯一、三菱UFJフィナンシャル・グループが1000億円の自社株買いを実施。ROEは15年3月期の7.4%から16年3月期は6.4%に下がるため、自社株買いで下支えをする。

 三菱商事は上限1000億円の自社株買いを実施。それでも16年3月期は資源安で最終減益となる見込みのため、ROEは15年3月期の7.5%から6.5%以下に下がる。キヤノンは14年12月期に1500億円の自社株買いと増配で、合わせて3150億円の株主還元策を実施した。連結純利益(2547億円)の1.2倍だ。ROEは13年12月期の7.9%から14年12月期は8.7%にアップした。

リキャップCB

 新株予約権付社債(転換社債:CB)と自社株買いを組み合わせる「リキャップCB」という手法が大流行している。ヤマダ電機は14年5月に1000億円のCB発行と500億円の自社株買いを発表。9月にはエディオンが150億円のCB発行と50億円の自社株買いをアナウンスした。12月にはケーズホールディングスが300億円のCB発行と100億円の自社株買いを明らかにした。成長が鈍化した家電量販店が「リキャップCB」を多用していることがわかる。

 リキャップCBの手法は、ROEを高めることを狙ったものだ。ヤマダ電機は14年3月期に3.5%だったROEを自社株買いで引き上げを狙ったが、15年3月期の純利益が大幅に減ったため1.8%に落ち込んだ。16年3月期は採算が改善するとして4.2%のROEを見込んでいる。

 エディオンのROEは14年3月期3.5%から15年3月期は3.4%に微減。ケーズホールディングスは14年3月期の10.5%から15年3月期は9.0%に下がった。収益低下によるROEの落ち込みを最小限に食い止めるために自社株買いを行ったわけだ。

 自社株買いは09年度(09年4月~10年3月)以降、2兆円に届かない水準で低迷していた。ところが野村證券の集計によると、14年度は3.36兆円と6年ぶりの高い水準に戻った。実施した社数も476社と6年ぶりに増加に転じた。自社株買いの勢いは15年度も続くことになる。

 自社株買いはROE改善の即効薬になっている。だが、ROEの向上は本来、利益を伸ばして実現するのが王道である。自社株買いはROEを取り繕う数字合わせの意味しかない。目先のROE改善の後に、本当の勝負どころがくる。利益の拡大に取り組まず、小手先だけのROE向上を狙っていると、ROEブームは一過性で終わってしまう。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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