高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

楽天、英語公用語化の「内実」 驚愕の効果創出!ついていけず退社した人も

「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数ある経済ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。

 本田技研工業(ホンダ)が6月29日、「2020年を目標に社内の公用語を英語にする」と発表した。ホンダの今後への関心もさることながら、このニュースを知ったビジネスパーソンのなかには、楽天やファーストリテイリングの先行事例を思い出した人もいたのではないだろうか。英語公用語化を導入した各社は現在、どのような状況になっているのか。

 そこで今回は“話題商品”の視点で「楽天の英語公用語化」の現在を紹介してみたい。

スタート時に比べて、TOEICの平均点が276点上がった

「802.6点」――。同社公式サイトの採用情報にある「Englishnization(英語化)」に記された従業員平均のTOEICスコアである。スタート直後を除いて、ほぼ一貫して右肩上がりで、上に示したのは2015年4月時点の数字だ。スタート時の10年10月は526.2点だったので、4年半で平均点が276点上がったことになる。TOEICは英語力向上の判断ツールのひとつだ。

 そもそも楽天は、なぜ英語を社内公用語にしたのか。筆者は次のように分析する。

(1)経営戦略として「世界一のインターネット・サービス企業を目指す」を掲げている
(2)「グローバル化」を推進するため
(3)具体的には、楽天グループ全体での情報の共有化、日本人社員に多い英語アレルギーの克服、世界中から優秀な人材を集める

 この詳細や背景を簡単に説明しておきたい。

(1)については、そもそもインターネットは世界中に構築された情報インフラなので、言語も日本語以外のものが圧倒的に多い。すなわち、楽天が戦う競合も世界中のIT企業であり、英語は不可欠という意味である。

 また、同社には「楽天経済圏」と呼ぶ仕組みがある。これは楽天市場や楽天銀行など同グループが提供するいずれかのサービスに入会した会員は、グループ内の共通IDを持ち、さまざまなサービスを受けられるもので、現在は同経済圏をグローバルに広げている。

 ニュースで報道された、過去に楽天が行った海外企業のM&A(合併・買収)――たとえば無料電話メッセージアプリ「Viber」(バイバー)の買収(14年)、インターネット通販関連サービス「Ebates」(イーベイツ)の買収(同年)――も、この楽天経済圏の拡大の一環である。

(2)は、海外企業の買収で新たにグループ社員となった外国人とも円滑にコミュニケーションを取ることを目的としている。そのために世界共通語として用いられる英語を使いこなす。前述した公式サイトのページでは「ONE LANGUAGE – ONE TEAM」という言葉も掲げている。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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