ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 楽天、英語公用語化の「内実」  > 3ページ目
NEW
高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

楽天、英語公用語化の「内実」 驚愕の効果創出!ついていけず退社した人も

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

キーワードは「やめないこと」

 楽天の名物ともいえる存在に、創業以来続ける「朝会」がある。現在は毎週火曜日・朝8時に全社員が集まり、各海外拠点をビデオ会議システムでつなぐ。毎月第3週目は「Englishnization(英語公用語化)の進捗状況」を伝えている。各事業部が英語力アップに向けて、どう努力しているかを発表して情報を共有するという。

 楽天の英語公用語化が順調に進んだ理由はいくつかあるが、振り上げた旗を降ろさずにPDCAサイクル(Plan/計画→Do/実行→Check/評価→Action/改善)を回し続けたことが大きいだろう。そして、トップダウンで物事が動き事業内容や活動領域がどんどん変わるIT企業の特性や、変化を続ける企業風土もある。

 三木谷氏は社内で「なぜ我々が負けないかというと、やめないからだ」と話すという。失敗した事業もあるが、しぶとく続けようとする。「絶対に失敗しない唯一の方法は、成功するまであきらめないこと」という格言と同じ姿勢だ。

 もちろん、すべての社員が英語公用語化にくらいついていったわけではない。会社の方針とは合わずに退社した社員もいれば、英語力が伸び悩む社員もごく少数だがいる。ただし、英語力が向上しないと処遇の面では厳しくなってしまう。

 現在、同社の人事評価は仕事のプロセスにおいて発揮した能力=コンピテンシーと、残した成果=パフォーマンスに分けて評価している。評価の半分を占める「コンピテンシー評価」の11項目の中には、「常に改善、常に前進」や「チャレンジ 革新 Get Things Done」という項目がある。常に改善、常に前進の項目では、「人間には2つのタイプしかいない」として、こう記されている。

【GET THINGS DONE】様々な手段をこらして何が何でも目標を達成する人間
【BEST EFFORT BASIS】現状に満足し、ここまでやったからと自分自身に言い訳する人間。一人一人が物事を達成する強い意思をもつことが重要。

 楽天グループとしてこう宣言している以上、同社に勤めて評価されたいのなら、英語力を向上させるしかないのだ。いろいろな外部の声を受けながらも英語公用語化を進め、人事評価にも連動させた同社の取り組みは、今後の企業モデルのひとつになるかもしれない。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

楽天、英語公用語化の「内実」 驚愕の効果創出!ついていけず退社した人ものページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!