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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

中国の経済危機など比じゃない…忍び寄る米国バブル崩壊、世界的「通貨危機」の兆候

文=渡邉哲也/経済評論家
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中国の経済危機など比じゃない…忍び寄る米国バブル崩壊、世界的「通貨危機」の兆候の画像1「Thinkstock」より

 アメリカ利上げが、世界的な話題になっている。

 以前から、アメリカは「利上げを行う」と宣言しており、ある意味で1年以上前から利上げの実行が予告されてきた。しかし、中国経済において、バブル崩壊ともいえる株式の大暴落が起きたために、アメリカの利上げについても不透明化しているのが実情である。

 アメリカとしては、基本的に「年内の利上げは譲れない」というスタンスであり、9月16~17日に開催されている米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが開始されるかどうかが、世界的な焦点のひとつとなっている。

 アメリカは、なぜ利上げにこだわるのだろうか。そこには、明確な理由がある。今、ニューヨークなどの不動産価格は、2008年のリーマン・ショック以前の水準を大きく超える状況になっており、マンハッタンなどでは明らかにバブルが発生している。

 アメリカは過剰流動性(貨幣が正常な経済活動や資金需要を上回った状態)にあるといえるわけで、このままドルの量を増やし続けた場合、バブルはさらに拡大していき、アメリカの中央銀行に当たる連邦準備制度(FRS)が制御できない状態に陥る可能性もある。

 そういった指摘がされるなか、アメリカは失業率も実体経済も回復基調にある。さらに、不動産価格も過熱気味であるために、金融当局としては、「このあたりで少し引き締めを行い、バブルを抑制したい」という狙いがあるのだ。

アメリカの利上げが世界に与える影響

 しかし、前述のように中国株の大暴落が7月に起きてしまった。不安定化する国際社会のなかで、ドルは中心的な役割を担っている。そのため、その動向がさらに注目されているのだ。

 世界の債券の60%近くは、いまだにアメリカのドルで発行されている。いわゆる、ドル建ての債券だ。ドル建ての債券を返済するためには、当然ながらドルが必要になる。既発の債券をロールオーバー(乗り換え)する際も、同様だ。

 しかし、「利上げを行う=通貨量を減らす」ということになるので、結果的にドルの資金調達はしづらくなる。アメリカが利上げすると、ドルの調達金利が上がることになるわけだ。

 これは、一律に上がればいいが、実際はそうではない。通貨量が減るため、椅子取りゲームのような状況になり、弱者はドルが調達できないということになりかねない。

 その結果、場合によっては通貨危機が発生してしまう国が出る可能性も否定できない。特に、資源に頼る新興国は深刻だ。資源価格の下落とアメリカの利上げが同時に発生した場合、通貨危機を招く危険は高くなる。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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