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熊谷充晃「歴史の大誤解」

「妻は家庭を守るべき」「女性は控えめ」は、つくられたデタラメ?たった百年の幻想

文=熊谷充晃/歴史探究家
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雑誌が煽った「良妻賢母」

 ここで重要な存在を担ったのは、当時、新メディアの雄だった雑誌だ。婦人向け雑誌が続々と創刊され、一様に特集などで「良妻賢母になるために」といった記事を掲載した。

 そこでは、世間の理想とされる華族夫人、つまりセレブ女性の生活ぶりが細かく紹介され、「それを手本にしなさい」と書かれていた。

 世間全体が「良妻賢母」を賛美するようになると、誰もが「内助の功」に拍手喝采するようになる。結婚して家庭に入った女性は、それだけで「ワンランク上」と見なされた。

 ところで、貞淑な妻というと、「夫が帰宅した時に、玄関で三つ指をついてお出迎え」というイメージも強い。しかし、この作法も、実はもともと「はしたない」とされてきたものだ。

 それも道理で、女性としては社会的に一段低いポジションとされていた、吉原の遊女たちが使う作法だったからである。彼女たちは、豪奢な着物を身にまとい、着物のイメージに合わせて大型のかつらをかぶっていた。それは、重量感たっぷりで行動の自由を奪うほどのものだ。

 頭が重くなっているため、普通に首をかしげてあいさつしようものなら、おでこを床に激しく打ちつけてしまう。そこで考案されたのが、少しは自由がきく両腕を指先までピンと伸ばして床につけ、ゆったりと上半身を前傾させるスタイルだ。これが、「三つ指をついてお出迎え」の起源なのである。
(文=熊谷充晃/歴史探究家)

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