「Thinkstock」より
ただ、これで年内の利上げの可能性が大きく後退したわけではなく、イエレン議長は早ければ10月に開く次回FOMCで踏み切る可能性もあると言明した。
結果として再確認された格好なのが、FRBとしては米国の雇用・物価情勢を最優先して金融政策を決定する方針に変わりがなく、中国や新興国の景気減速や資本流出といった問題は二の次だということだ。世界経済の先行きを左右する政策対応のボールが投げ返されたかたちで、震源地である中国の対応が再び注目されることになる。
実施されていれば、米国の利上げは9年3カ月ぶりのことだった。FRBは2008年のリーマンショックを受けて、世界に先駆けて異次元の金融政策を採用、これに日本銀行や欧州中央銀行(ECB)が追随した経緯がある。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%とする事実上のゼロ金利政策がいつ解除され、米国の金融政策が正常化するか、早くから注目されていた。
ただ、8月の中国発の世界同時株安をきっかけに、米国の利上げで海外、特に中国などの新興国市場に流入していた米ドルの還流が起きて、その資本流出が中国や途上国経済の悪化に拍車をかけるのではないかとの懸念が台頭。トルコのアンカラで今月初めに開かれた20カ国(G20)財務大臣・中央銀行総裁会議の声明でも、名指しこそしなかったものの、FRBに慎重な対応を迫る文言が盛り込まれていた。
それにもかかわらず、FRBは米国内事情を最優先して“独善利上げ”に踏み切るのではないかとの見方が根強く、今回のFOMCはその動向がいつも以上に注目を集めていた。
ただ、日本経済新聞によると、イエレン議長はFOMC後の会見で、「FOMCのメンバーの大半が(政策金利である)FFレートを今年末までに引き上げると予想している。先行きの不透明さは常にあることで、完全に払拭されることはないだろう。世界経済と金融市場の動向について、米国への影響を精査するためにはもう少し時間が必要と考える」と強調、近く利上げに踏み切る考えを明らかにした。
その時期についても、「すべてのFOMCで金融政策の変更ができる」などと語り、次回10月27、28両日に開くFOMCで利上げする可能性を示唆したという。