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最高益・花王が抱える「深刻な問題」と「疫病神」

文=田沢良彦/経済ジャーナリスト
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カネボウ買収で狂ったシナリオ

 「石鹸の花王」が化粧品事業に参入したのは1982年のこと。「花王の華の時代」といわれた1980年代には洗濯洗剤「アタック」、洗顔料「ビオレ」、入浴剤「バブ」、紙おむつ「メリーズ」など今日の同社を代表する数多くのロングセラー商品が生まれた。その余勢を駆っての参入だった。

 だが90年代以降、「技術の花王」からロングセラー商品は生まれなくなった。今なお、80年代に生み出したロングセラー商品に収益を頼っているのが現状だ。

 「将来の主力事業に」との期待を込めて花王は82年、基礎化粧品「花王ソフィーナ」を掲げて化粧品事業に参入。イメージ訴求の広告宣伝を繰り返す当時の資生堂やカネボウに対し、まるで学会で説明するかのように肌の断面図を使って効能を解説するなど、技術の花王らしい同社の立証主義的な珍しい広告を展開した。こうした取り組みが消費者に「化粧品業界のイノベータ」という印象を植え付け、瞬く間に人気商品入りするなど化粧品事業は順調な滑り出しを見せた。

 立証主義的な広告展開で商品訴求力の強い花王ソフィーナは年を追うごとにシェアを伸ばし、基礎化粧品分野では2000年頃に業界大手の資生堂やカネボウの背中が見えるとところまで売り上げを伸ばしていた。その勢いに乗り、一挙に大手を追い越そうと06年に業歴、売上高、ブランド力のすべての面で花王を勝るカネボウの化粧品事業を買収したのが、花王の化粧品事業育成シナリオを狂わせた。その後の化粧品事業は苦難の連続だった。

 基礎化粧品に強い「技術の花王」とメーキャップ化粧品に強い「感性のカネボウ」の相乗効果で、花王の化粧品事業育成は第二ステージに飛躍するはずだった。だが、化粧品事業の売り上げはカネボウ化粧品の売上高を連結化した07年3月期がピーク。08年3月期は辛うじて業績横ばいを確保したものの、09年3月期はリーマンショックの影響で売上高が前期比8.0%減の2908億円となり、営業利益は185億円の赤字に沈んだ。

 10年3月期は売上高が前期比8.8%減の2651億円とさらに減少し、営業利益の赤字幅は302億円に膨らんだ。以降も業績は低迷し、期待したカネボウ化粧品との相乗効果は一向に生まれる気配がなかった。

「花王は親会社なのに『業界の先輩』であるカネボウに遠慮したのか、同社の経営独立性を尊重し、経営破綻の原因となったカネボウの『事なかれ主義経営』を改革しようとせず、両社の人事交流もほとんどなかった。売り上げもカネボウがソフィーナを大きく上回っているのを笠に着たカネボウ社員は花王社員を見下し、販売現場で両社員が揉めるのがしょっちゅうだった。相乗効果どころかライバル意識剥き出しだった」(業界関係者)

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