時給180円の内職を強要

 そしてもうひとつは、3年前に足立区内にある別の図書館で起きた女性副館長の公益通報事件だ。事件前年の夏、区の要請で図書館の蔵書2万冊に盗難防止シールを貼る作業が行われた。担当したのは、12名のパート従業員。おかしなことに、その作業を始めるのは、毎日就業時間が終わって一度タイムカード押した後。しかも、報酬は残業代としてではなく、1枚7円の完全出来高制賃金であり、“内職”として扱われた。

 実際に作業を始めてみると、時給換算で180円程度にしかならない。この指定管理者は地元で長年金属加工業を営む町工場だったため、内職を活用するのは人件費を低く抑える“腕の見せ所”だったのかもしれないが、公務でそのような労働は前代未聞だ。

 その様子をそばで見ていた女性副館長は、そのような脱法行為は到底許されないと、作業中止を上司に強く進言したが、その意見は聞き入れられることなく作業は最後まで進められた。

 翌年1月、会社側はこの女性副館長に、4月以降の契約更新をしないと伝えた。雇い止めの理由の明示を求めると、会社は「業務を遂行する能力・勤務態度が十分でないと認められるため」と文書で回答。

 思い当たり節は何ひとつなく、内職作業の中止を進言したことへの報復としか思えなかった女性は地元のコミュニティユニオンに加盟し、団体交渉で雇い止めの理由について問いただしたが、この会社も「1年ごとの有期雇用で、契約満了にすぎない」と繰り返すのみ。

 そこで女性は、労働基準監督署へ最低賃金違反行為を告発するとともに、区の公益通報窓口にも通報。すると4カ月後、労基署がこの指定管理者の本社に立ち入り調査を行い、最低賃金法違反の行為を正式に認定して是正勧告を出した。

 区の公益監察員も1年かけて関係者に聴取した結果、女性の主張をほぼ全面的に認めて「公益通報者保護法に違反している可能性が高い」とまで言及した報告書を区長に提出した。

 しかし、どちらの役所も告発者の雇用継続に関しては、まったくノータッチ。女性は、仕方なく地位確認を求めて一昨年夏、東京地方裁判所に雇用主を提訴したのである。

 そして今年3月、「雇い止めは無効」との地裁判決が出て女性は完全勝訴。会社側は即日控訴したものの、8月に出た高等裁判所の判決も地裁と同じ「雇い止めは無効」との判断だった。

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