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片山修「ずたぶくろ経営論」

VW不正、ベンツとBMWへも疑惑の目 「誤魔化し」常態化、日本勢への遅れに焦り

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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内部対立

 “横転”といえば、指摘しなければいけないのは、VWはオーナー企業であるということだ。株式の50%以上をポルシェ家と従兄弟にあたるピエヒ家を合わせた「ポルシェ一族」が所有している。次いで、本社のあるニーダーザクセン州が20%、カタール政府が17%だ。欧州委員会は、州が大株主であることを問題視していたが、ドイツ政府が突っぱねてきたという事情がある。

 しかも、オーナー企業では珍しいことではないが、大株主であるポルシェ家とピエヒ家が互いにライバル視して対立するなど、内部に対立関係を抱えているのだ。

 現に今年4月にはお家騒動があった。長年CEOを務め同社を世界トップレベルにまで引っぱり上げたフェルディナント・ピエヒ氏が辞任したのだ。これは、米国事業をめぐる意見対立から、ピエヒ氏がヴィンターコーン氏降ろしを謀ったところ、ポルシェ家の一部株主がヴィンターコーン氏側につき、逆にピエヒ氏が退任に追いやられたという構図だったといわれている。

 新体制が動き始めた矢先に今回の騒動が発生したが、早々のヴィンターコーン氏辞任の背景には、先に辞任したピエヒ氏の影がちらつく。

 VWの経営はオーナー家が絶大な力を持ち強権政治を行ってきたという点で、「所有と経営の分離」やガバナンスの透明性とは縁遠い。ヴィンターコーン体制においても、同氏は不正を「知らなかった」としているが、かりに本当だとすれば、管理体制、管理能力に問題があったといえるだろう。

 マネジメントのごたごたによる“横転”劇は、コーポレート・ガバナンスの欠如やコンプライアンスの問題、さらにブランドイメージの低下につながる。それは、先の東芝の不正会計事件を見ても明らかであり、これは万国共通である。

「ブランド力」への驕り

 ドイツメーカーは、「自動車のスタンダードは自分たちがつくる」という強い自負を持っている。その自負は、いつの間にか驕りに変わっていた。いってみれば、VWは「ブランド」の上にあぐらをかいてきたといえる。

 VWは、たくみなブランド戦略を展開してきた。主力車種は「ゴルフ」「パサート」などがあるが、個々の車種よりむしろ「VW」のロゴマークやブランドを前面に押し出し、訴求してきた。

 価格戦略も巧みだった。車種ごとに最低価格を決めると、機能向上による値上げや為替変動による安売りなどは、ほとんど行わない。安い車をつくらないことでブランド力を維持してきたのだ。

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