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安保徹「間違いやすい医学の常識」

薬や湿布薬、かえってマイナス?病気がいつまでも治らない「本当の」理由

文=安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士
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薬や湿布薬、かえってマイナス?病気がいつまでも治らない「本当の」理由の画像1「Thinkstock」より

 つらい症状が出て病院に訪れる患者さんに対して、医師はどのように患者さんの言葉を引き出しているのでしょうか。

医師「いつからその痛みなどの症状が出ましたか」
患者「2日ほど前からです」
医師「その後どのようになって、今の状況はどうですか」
患者「だんだんひどくなって、今は●●です」

 概ねこのような問答があり、検査が始まります。最近の医師は検査値とにらめっこで診断を下し、対症療法の薬を出しています。多くの一般的な病気、例えば、腰痛、糖尿病、リウマチ、高血圧症、狭心症などの原因は不明のままで、病院に通い続けてもほとんど治ることはないでしょう。患者側も不満はあるものの、半分くらいはあきらめて現状を変える気迫はありません。

 このような病歴(アナムネーゼ)の取り方では、診断はついても病気の原因にたどりつくことはできません。病気の原因は症状の出る前の生き方にあるからです。生き方の無理が続く、心配事が多い、毎日のように夜更しをするといったことが、多くの病気に共通した原因になっています。忙しさが続けば、筋疲労が起こり腰痛が出てきますし、関節に負担がかかればリウマチになります。

 これからの医学は、患者に原因を自覚させ、偏った生き方から脱却させることを第一とする必要があるでしょう。原因を取り除かずして病気が治ることはありません。むしろ、対症療法の薬はマイナスに作用することが多いのです。

病気の原因は生き方の無理

 例えば、腰痛を考えてみましょう。昨今ありふれた病気ですが、大切な理解が含まれています。

 私たちは忙しいと筋肉が疲労しますが、疲労が少ない時は休息によってゆっくりと回復し、特に症状もなしに治っています。しかし、疲労が強い時は、血流の回復は急激に起こります。ここで作用するのが、組織ホルモンであるプロスタグランジンです。プロスタグランジンは、一つの物質で血流量を増やす(腫れる)、熱をもつ、痛みをつくるという3つの働きをもっています。

 腰痛時にプロスタグランジンの産生阻害剤である消炎鎮痛剤を飲み薬や湿布薬として使用すると痛みはとれますが、血流も悪くなってしまいます。そもそも痛みと血流回復は同一のメカニズムで起こっているので、痛みをとることとは、血流回復を抑制し筋疲労からの回復も止まってしまうことを意味します。

 腰痛で湿布薬を貼った人が、なかなか腰痛から脱却できずに病院通いが続く理由になっています。薬に頼るのではなく、まず忙しさから脱却して病気を治さなければなりません。

安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

1947年、青森県生まれ。東北大学医学部卒業。現在、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授(国際感染医学講座免疫学・医動物学分野)。米国アラバマ大学 留学中の1980年に「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体」を作製。89年、胸腺外分化T細胞の存在を発見。96年、白血球の自律神経 支配のメカニズムを初めて解明。国際的な場で精力的に研究結果を発表し続け、免疫学の最前線で活躍
医学博士安保徹 公式サイト

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