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町田徹「見たくない日本的現実」

消費者を愚弄するケータイ料金格差問題!個人はバカ高く、法人は月額5百円の格安

文=町田徹/経済ジャーナリスト

爆発的な価格破壊が起きていない理由

 高市大臣の問題意識そのものは大きく間違っていない。携帯3社がアップルiPhone 6sの販売開始に合わせて鳴り物入りで宣伝している通話の「格安プラン」は、データ通信のヘビーユーザーに対する付加的なオプションだ。データ通信で多額の通信料を払わないと契約できない仕組みになっている。携帯料金を抑えるためにライトユーザーにならざるを得ない利用者には、無縁のものなのである。

 また、携帯電話会社を乗り換えて新型端末を無料もしくは格安で入手する人たちのために、長期間一つの事業者で同じ端末を使い続けているユーザーの支払う通信料金が費やされている問題も、すでに問題指摘から10年前後が経つよく知られた問題である。

 これら2つの問題に、総務省は再三口頭指導を行い、携帯電話事業者に是正を促してきたが、事業者側は口先では素直に従うようなことを言いながら、目先を変える新たなプランを打ち出す程度の対応でお茶を濁してきた。

 高市大臣が、解決策として期待を込めて紹介したMVNOだが、過去数年間の新規参入は目覚ましい。2015年3月末には181社と、過去1年半で30社もが新規に参入した。MVNOが提供するスマートフォンの利用料金も格安だ。大手3社が最低で月額6500円(基本料2700円、データ通信料3500円、ネット接続料300円の合計)なのに対し、例えば楽天モバイル(フュージョン)は月額1600円(3.1GB)プラス通話料(20円/30秒)、イオンスマホ(ビッグローブ)は月額1350円(1GB)プラス通話料(20円/30秒)といった具合である。

 しかし、MVNO各社は回線を携帯3社から賃借している。携帯大手という観音様の手のひらの上を飛び回る孫悟空のように、限定的な競争をしているにすぎないのだ。その回線の賃借コストを下回って、利用者向けのサービスを提供することは不可能だ。

 また、MVNO各社と携帯3社とでは基礎体力が違う。メーカーから大量にスマートフォン(スマホ)を買い取って、通信料金と一緒に月賦代金を回収するという販売手法を真似るほどの体力が、MVNO各社にはないのだ。結果として、iPhoneやXPERIAのような人気機種は提供できず、爆発的な競争力を持ちえない。

 これが、すでに180を超すMVNOが誕生しながら、爆発的な価格破壊が起きていない理由なのだ。高市大臣がどんなに強調しても、これまでと同じやり方で、政府が描くような携帯料金の引き下げが起きるわけがない。

町田徹/経済ジャーナリスト

町田徹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
1960年大阪生まれ。
神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社に入社。
米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。
雑誌編集者を経て独立。
2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。
2019年~ 吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員
町田徹 公式サイト

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