ビジネスジャーナル > 企業ニュース > docomoニュース > 携帯料金値下げ指示、甚大な悪影響?  > 2ページ目
NEW

安倍首相の携帯料金値下げ指示、利用者と業界全体に甚大な悪影響?より値上がりの恐れも

文=佐野正弘/ITライター
【この記事のキーワード】, , ,

安倍首相の携帯料金値下げ指示、利用者と業界全体に甚大な悪影響?より値上がりの恐れもの画像2auは首相発言の直前に、1回当たりの通話定額時間を5分に制限する代わりに基本料を1000円下げた「スーパーカケホ」を打ち出していた

料金値下げは本当にメリットなのか?

 実はiPhone 6s/6s Plusの発売に合わせるかたちで、KDDI(au)が定額通話時間を制限する代わりに基本料を1000円下げる「スーパーカケホ」の提供を実施しているが、今回の首相の指示ではより踏み込んだ施策が求められるものと想定される。首相の値下げ発言も、携帯電話に回していた支出を減らすことで、別の消費に回して経済を活性化することを狙ってのことであろう。毎月の料金が下がることは消費者にとってみれば喜ばしいことに間違いはない。

 だが、それは現在のサービスが維持されたままの状態で、値下げが実現した場合の話だ。当然ながら単純に大手キャリアの月額料金が下がれば、キャリア自身の売り上げが下がり、業績が悪化してしまう。携帯電話料金の値下げがキャリアの経営に与えるダメージは非常に大きく、NTTドコモが昨年大幅な下方修正を実施したのも、新しい料金プランに移行した際、同社が想定している以上に容量が少なくて安価なパケット定額サービスの契約者が多かったためといわれている。

 では、キャリアの業績が悪化すると、どのような影響がでると考えられるだろうか。最もわかりやすいのは、インフラの質の低下であろう。海外に行ったことがある人であれば理解しやすいと思うが、全国津々浦々、人口の少ない地方や山間部などであってもLTEによる高速通信が利用できる国は、日本と韓国くらいなものだ。それくらい日本の携帯電話インフラは世界有数の充実度を誇っているのだが、もしキャリアの売り上げが落ちれば、投資効率を上げるためインフラ投資が大都市に集中し、地方からインフラの質が急速に低下する可能性が出てきてしまうだろう。

 また単純にキャリアの基本料金を下げてしまえば、現在急速に伸びているMVNOに水を差すことにもなりかねない。MVNOは「格安スマホ」「格安SIM」などといった言葉で注目されている通り、料金面の優位性があるからこそ人気を高めている部分がある。だがキャリアが基本料を下げ、MVNOに近い水準にまで料金を下げてしまった場合、よりサービスの充実したキャリアにユーザーが流れてしまい、MVNO全体が急速に冷え込んでしまいかねないのだ。

 そして端末料金と通信料の分離だが、これも単純に実施してしまえば、特に国内の端末メーカーに対し甚大な影響を与えることになる。実際、2007年に総務省主導で設立された「モバイルビジネス研究会」の提言により、通信料と端末料金の分離が実施された際は、翌年の携帯電話端末の出荷台数が4割近く減少。多くの国内端末メーカーがその影響を受けて体力を大幅に弱める結果となった。

 もしキャリアが端末割引できる余地が大幅に少なくなってしまった場合、スマートフォンの波によって一層体力を奪われた国内メーカーに対し、完全に引導を渡すことにもなりかねない。日本のメーカーがキャリアの販売支援を受け、高性能な端末を開発することが、海外のスマートフォンメーカーに高性能な部材を輸出するベースとなるなど、産業的に大きな影響を与えていることも忘れてはならない。

安倍首相の携帯料金値下げ指示、利用者と業界全体に甚大な悪影響?より値上がりの恐れものページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!