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横浜マンション傾斜、データ偽装の旭化成建材に広がる「経営危機」懸念

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 住宅・建材事業は戸建て住宅「へーベルハウス」の旭化成ホームズのほか、リフォーム事業、断熱材の製造・販売を行っている。売上高は6038億円、営業利益は630億円。全社の営業利益の4割を稼ぎ出した。海外で高機能樹脂、繊維などの販売が好調なケミカル・繊維事業と肩を並べるドル箱である。住宅・建材は収益の大黒柱だ。

 耐久性が高いと評判のへーベルハウスは、9月に茨城県で発生した鬼怒川堤防決壊の際、濁流に流されなかったことで話題になった。だが、今回の事故でブランドイメージは傷ついた。差し引きゼロどころかマイナスである。受注に影響が出ることは避けられない。稼ぎ頭だっただけに大打撃だ。

 旭化成建材と親会社の旭化成は10月22日、データ偽装を行った現場責任者が関わった物件が全国に41件あると公表した。旭化成建材が過去10年間に杭を打った物件は、和歌山、沖縄を除く45都道府県に3040件あった。全物件についてデータの偽装の有無を調べる。国土交通省に報告した後、午後6時過ぎから記者会見した。データ偽装を行った現場責任者が関わった物件は9都県に41件あり、愛知県が最多の23件。岐阜6県、三重5県と中部地方に集中している。今後、150人態勢で全物件について施工報告書をチェック。データの偽装の有無を確認するが、横浜のマンションの現場責任者が関わった41件の調査を優先する。旭化成は22日、弁護士3人で構成する外部調査委員会を立ち上げた。関係者によると、3040件の結果の全容が判明するまでに数年かかるとみられている。

 問題物件が集中する愛知県など中部各県では自治体の対応も重要だ。というのは、不正の疑いがあれば掘削して確認する必要があるからだ。自治体が早く動かなければ住民の不安はさらに広がる。大手不動産や販売会社は販売中のマンションについて「この物件には旭化成建材による杭打ち工事はありません」といった説明を始めた。販売価格が高止まりして売れ行きが鈍っている新築マンションの販売にも逆風が吹き出した。

ワンマン経営

 旭化成建材の現場責任者の行為について「個人の問題ではない。企業の体質に根差している」(大手ゼネコン役員)といった厳しい指摘が出始めたが、旭化成建材の親会社、旭化成とはどんな会社なのか。

 旭化成の創業者は日窒コンツェルン創始者の野口遵氏。1922年に宮崎県延岡市で旭絹織を設立して、合成アンモニアを製造したことに始まる。敗戦後の46年、商号を旭化成工業(現・旭化成)に変更。チッソ、積水化学工業は、日窒コンツェルンから分かれた同根の会社だ。60年に発売した食品包装ラップの代名詞ともなった「サランラップ」の爆発的なヒットで知名度は全国区になった。72年に「ヘーベルハウス」ブランドで住宅事業に本格参入した。

 旭化成では戦後、宮崎輝氏と山口信夫氏という「2人の長老」(業界筋)が長きにわたり経営の実権を握ってきた。92年に現職会長のまま82歳で死去した宮崎輝氏は敗戦直後、37歳で取締役に就任。取締役歴は半世紀近く、社長・会長として30年近く存在感を示し続けた。

 バブル崩壊後、野村證券などの4大証券で損失飛ばし事件が発覚し、住友銀行(現三井住友銀行)では反社会的勢力に取り入られるイトマン事件が起きた。この時、宮崎氏はこう発言した。

「問題を引き起こしている野村證券や住友銀行は若返りを進めたため、若い役員が多い。こうした人が収益を上げようとがんばったことが今回の不祥事が起きたひとつの要因ではないか。老害ばかりいわれるが、若害も考えなくてはいけない」

 その宮崎氏に「陸士(陸軍士官学校)トップならオレの秘書をやれるだろう」と引っ張られたのが山口氏だった。秘書室長、総務部長として宮崎氏に仕えてきた山口氏は、92年に宮崎氏が現職会長のまま死去すると、会長の椅子を引き継いだ。山口氏は社長を務めたことはないが、会長としての在任期間は18年に及び、10年9月に名誉会長として85歳で亡くなるまで代表権を手放さなかった。人事権を握り旭化成のドンとして君臨した。この間、日本商工会議所の会頭を務めた。

「宮崎氏と山口氏は、引き際を誤った。杭打ち工事のデータ改ざん事件を起こした旭化成建材の親会社、旭化成は2人のドンが君臨したワンマン会社だった」(業界筋)

 今回の事件は、こうした旭化成の負の遺産が一気に露呈した結果なのかもしれない。
(文=編集部)

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