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株価急落のJTが抱える「時限爆弾」 事業多角化失敗、一気に巨額減損の危険も

文=編集部
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株価急落のJTが抱える「時限爆弾」 事業多角化失敗、一気に巨額減損の危険もの画像1JT本社ビル(「Wikipedia」より/BlackRiver)

 たばこ市場で世界第3位の日本たばこ産業(JT)の大博打に、株式市場の反応は冷ややかだ。

 9月30日、JTの株価は一時、前日比10%安と急落した。終値は前日比266円(7%)安の3695円。1日で時価総額が5320億円目減りした。前日に、米たばこ大手レイノルズ・アメリカンのブランド「ナチュラル・アメリカン・スピリット」(アメスピ)の米国以外の事業(商標権と米国以外の子会社9法人)を6000億円で買収すると発表した。アメスピは有機栽培の葉たばこを原料とし、香料などの添加物を使わない個性的な商品として日本や欧州の若者に人気のある銘柄だ。アメスピの主な販売エリアは米国だが、訴訟リスクを恐れて買収の対象から外した。16年初めに買収は完了する見込みだ。

 JTの株価が下落した理由は、買収額の高さだ。アメスピ事業の14年12月期の売り上げは176億円、税引き前利益は21億円、販売本数は31億本。JTは売上高の34年分、税引き前利益の286倍もの資金を投じるのだ。株式市場では「6000億円の買収額は割高」との指摘が出た。

 買収の妥当性を測る指標に、「買収金額÷EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)」という比率がある。買収費用をその企業のキャッシュフローで賄うと何年かかるかを示す指標で、倍率が低いほど割安だとされる。アメスピ事業の買収は、この倍率が優に50倍を超える。割高といわれた14年のサントリーホールディングスによる米ビーム社の買収でさえ20倍だ。そのため、株式市場の評価が厳しいものになるのは当然といえる。

 国内たばこ市場は1996年の3483億本をピークに、14年は1793億本と半減した。JTは海外のたばこ会社をM&A(合併・買収)することで活路を見いだそうとしている。米国は訴訟リスクが高いため避け、欧州とロシア市場をターゲットにした。

 だが、先進国市場は喫煙規制の強化やたばこ増税などで、今後需要が縮小することは避けられない。そこでM&Aの対象地域を中東やアフリカに広げた。今年9月、イランのたばこ5位、アリヤンを買収した。アリヤンは低価格帯の紙巻きタバコに強みを持つ。JTの高価格帯の商品である「ウィンストン」の人気はイランでも高く、JTのイランでのシェアはトップだ。11年にスーダンのたばこ大手ハガー、13年にはエジプトの水たばこ会社ナハラを買収するなど、販売する地域を拡大している。

投資会社化

 JTが海外たばこ会社の大型買収に踏み込むのは、今回が初めてではない。JTは「成長の時間を買う」ために、海外でのM&Aを積極化している。99年に米RJRナビスコの海外たばこ事業を9400億円で買収。07年には英ギャラハーを2兆2530億円で手に入れた。

BusinessJournal編集部

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