2つの買収によりJTは、米フィリップ・モリス・インターナショナル、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコに迫る世界第3位のたばこメーカーとなった。旧日本専売公社から85年に民営化されたJTは、保護と制約を受ける典型的な内需型企業だった。海外でのたばこ販売数量は全体の1割にも満たなかった。JTが海外でのM&Aに活路を求めたのは、事業の多角化が相次いで破綻したからだ。民営化後に数多くの新規事業に進出したが、「お役所体質が災いして」(JT関係筋)うまくいかなかった。

 多角化路線の失敗から、本業のたばこに回帰した。しかし、健康志向の高まりやたばこ増税で、国内たばこ市場は縮小している。そこで目を向けたのが海外だった。相次いで海外のたばこ会社2社を買収した。これが大成功し、海外のたばこ事業がドル箱となった。

 14年12月期決算(4~12月までの9カ月の変則決算)では、売上収益の55%、営業利益の68%を海外のたばこ事業が叩き出した。皮肉なことに、グローバルな事業を任せられる人材が日本にいなかったことが幸いした。海外事業を統括する子会社に経営を任せ、本社は口を挟まなかった。「カネは出すが、口を出さない」。これがうまくいった理由だ。

 スイスに拠点を置くJTインターナショナル(JTI)を「世界本社」と位置付け、JTIにぶら下がる「日本ローカル本社」がJTというのが実態だ。世界市場では、たばこ専門の機関投資家に徹し、次々と海外のたばこ会社を買収している。

のれん代というリスク

 JTの15年12月期の連結決算(国際会計基準=IFRS)の売上収益は2兆3500億円、営業利益は6680億円の見込み。前期は決算期変更に伴う9カ月の変則決算。14年1~12月に置き換えた値と比べると、売上収益は3%減。7月末に飲料の自販機事業をサントリー食品インターナショナルに1500億円で売却したため、売り上げが減った。一方、自販機事業を売却したことで営業利益は17%増。自販機の売却で、1140億円が増益要因となる。

 JTのアキレス腱は、巨額買収でのれん代が積み上がっていることだ。15年6月末時点ののれん代は1兆4916億円。総資産の3割、自己資本の6割に達する。アメスピ事業を6000億円で買収したことにより、のれん代は2兆円前後に膨れ上がることになるとみられている。日本会計基準では、のれん代を20年以内に償却することが義務付けられているが、IFRSではのれん代は償却しなくてよい。しかし、のれんが毀損(=価値が目減りした)と判定されると、IFRSでは一気に減損処理をしなければならなくなる。「機関投資家に変身したJTは、いつ破裂するかもしれない、のれん代という名の時限爆弾を抱えている」(市場筋)といわれるゆえんである。JTは会計コンサルティング会社と助言契約を結び、毎期のれん代の価値を評価する態勢を整えて、リスク管理を行っている。
(文=編集部)

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