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金子智朗「会計士による会計的でないビジネス教室」

不正がますます発覚しやすく「割に合わない」時代に 利益&金銭報酬優先の致命的欠陥

文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表
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 今日において購買行動を決める大きな要因のひとつは、その企業に対する共感だといわれている。たとえば、環境に配慮している企業や人に優しい企業に対して人は共感し、それを理由にその企業の製品を買うのである。そして、そのような企業の製品を使っていることが「カッコいい」と共感される。製品自体の差別化が難しくなればなるほど、その企業の姿勢や価値観に対する共感がますます購買行動の決め手になっていくだろう。

 共感が重要性を持つのは、インターネット社会の特徴でもある。ツイッターやフェイスブックなどのSNSは共感を介して人と人とがつながるシステムである。好意的なリツイートや「いいね!」は共感そのものだ。ネットの中で共感を得られなければ、今の若者は生きていけない。

 不正はどう考えても共感されない。今頃ネット上では「VW、マジないわー」とでもつぶやかれていることだろう。共感を重視する人たちが、そのような共感できないクルマを買うわけがない。

利益重視の限界

 東芝にしてもVWにしても、共通して背景にあるのは利益を一番に考える企業姿勢だ。「企業なんだから利益の追求は当然だろう」と思われるかもしれないが、利益はあくまでも結果だ。結果だけを重視すると手段を選ばなくなり、最後は不正にまで手を染めるのだ。

 金銭的報酬が倫理に反する行動を助長する可能性があることは以前から指摘されている。2000年に海外のある保育園で実験的に「閉園時間までにお子様を引き取りに来ない場合は罰金を科すことにする」という告知を貼り出した。すると、遅刻者がほぼ2倍に増加したのである。「遅刻したら申し訳ない」という道徳的な義務感が、経済的取引に変わってしまったからだ。保護者達は「お金さえ払えば済むんでしょ」と思うようになったのである(『モチベーション3.0』、ダニエル・ピンク)。

 歴史を振り返ってみても、粉飾事件の背景にあるのは結局すべて、「利益という“数字”を出せばいいんでしょ」という考えだ。

 達成すべきは「利益を上げること」なのか、「本当に価値あるものをお客様に誠実に提供すること」なのか。青臭い話かもしれないが、やはり重要なのは、その企業の理念であり価値観なのである。

 最近の「メイド・イン・ジャパン」に対する高い評価を見る限り、幸い今でも日本製品は信頼できると思われている。それだけ信頼されている者の責務として、我々日本人は愚直なまでに正直者でいようじゃないか。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)

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