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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

首都圏の医療が崩壊の危機 医師不足深刻で中東並み 解消と逆行する厚労省の詭弁

文=上昌広/東京大学医科学研究所特任教授
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 江戸川区や足立区などの東部、多摩地区など西部の医師数は中東並みだ。つまり、東京に隣接する他府県の人たちが、東京医療機関を受診する際には、東京中心まで通わなければならないことになる。外傷や検査などの一時的な入院ならまだしも、慢性疾患や要介護状態の患者が継続的に通うのは困難だ。

 さらに問題なのは、東京近郊に大量の団塊世代、団塊ジュニアが住んでいることだ。これから2050年にかけて、彼らが次々と高齢化していく。

 一方、医師も高齢化する。あまり議論されないが、医師不足を議論する際のポイントのひとつが医師の高齢化だ。国民は高齢化するほど病気に罹りやすくなるが、医師は高齢化するほど働けなくなる。現在、医師数は着実に増えているが、多くは高齢医師だ。なぜなら、現在日本の医師増に寄与しているのは、高度成長期に新設された40校の医学部や医学校の卒業生だからだ。1期生はすでに50代半ばを超え、「当直をこなせるばりばりの勤務医」から引退しようとしつつある。今後、増加するのはもっぱら高齢の医師だ。

 つまり、これからの我が国では、高齢医師が高齢者を診察する「老々医療」の世界になる。この状況は図3より一目瞭然だろう。


厚労省の詭弁

 では、どうすればいいのだろう。

 誰が考えても、若手の医師を増やすしかないが、これまでまったく無策だったわけではない。「改革」を志した政治家もいた。その一人が現東京都知事の舛添要一氏だ。

 08年、舛添氏が厚労大臣の時代に、彼が主導して、従来の医学部定員削減の閣議決定を撤回し、医学部定員を増やす方向に舵を切った。その後、現在までに全国で約1500人の医学部定員が増員された。日本医師会や厚労省は、この「改革」を強調し、これ以上増やさなくても、やがて医師は充足すると主張する。

 例えば、7月1日付読売新聞は、厚労省の言い分を紹介している。少し長くなるが、そのまま引用しよう。

「日本の人口10万人あたりの医師数が10年後、先進国が主に加盟する経済協力開発機構(OECD)の平均を上回るとの推計を厚生労働省がまとめた。医学部の定員増などで、先進国の中で低水準という長年続いた状況から抜け出す見通しとなった。地域や診療科によっては医師不足が続く可能性もあり、厚労省は夏以降に有識者会議を設け医師養成のあり方を検討する。厚労省は、医学部の卒業生数や今後の人口推計などを基に、将来の10万人あたりの医師数を推計した。それによると2012年の227人から20年に264人まで増え、25年には292人となり、OECDの平均(11年、加重平均)の280人を上回る見込み。その後も30年に319人、40年に379人と増加が続く。政府による医学部の入学定員の増員策や人口減少の影響が出る格好だ。」

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