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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

首都圏の医療が崩壊の危機 医師不足深刻で中東並み 解消と逆行する厚労省の詭弁

文=上昌広/東京大学医科学研究所特任教授
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 この記事は、国民の年齢構成、医師の年齢構成、性別をまったく考慮せず、単に数だけ比較している。さらに25年に11年のOECD平均に到達することを、医師充足の指標としている。日本は世界でもっとも高齢化が進んだ国だ。現在のOECDの平均に10年後に到達することに、どのような意味があるのだろう。厚労省の詭弁としか言いようがない。

 確かに、記事の中には「地域や診療科によっては医師不足が続く可能性もあり」と書いており、将来的にも医師が不足する地域がある可能性については言及している。ただ、これでは欺瞞だ。この文言を普通に解釈すれば、「医師を増やしても、地方都市や僻地の中には医師不足が深刻な地域が残る」という印象を受けるだろう。ところが、もっとも医師が不足する地域は首都圏だ。

骨抜きにされた改革

 では、なぜ厚労省は「医師不足は緩和する」と主張するのだろうか。

 それは、厚労省は医師が増えると、医療費が増えると信じこんでいるからだ(医師誘発需要仮説)。厚労省は「医療費を抑制することが最大の使命」と考えている。しかし、この医師誘発需要仮説の妥当性は状況次第だ。医師が足りない状況では、医師を増やせば医療費は増える。一方、医師数が一定レベルを超えれば、医師を増やしても、医療費は頭打ちになる。問題は、日本がどのような状況にあるかということだ。

 実は、その状況は地域によって大きく異なる。図4に示すように、西日本では医師数と医療費は相関せず、医師数が少ない東日本で両者は相関している。


 以上の事実は、東日本で医師を増員する必要があることを示している。当然だが、東日本の医師を増やせば医療費は増える。厚労省にとって頭の痛い問題だ。強面の財務省と対峙しなければならなくなる。

 医師数の増加は、日本医師会や大学医学部長たちにとっても嬉しくない。商売敵が増えるからだ。日本医師会の幹部たちは「(数が増えて儲からなくなった)歯科医のようになりたくない」と公言して憚らないし、東日本の医学部長たちは「医師を増やせば質が下がる」という主張を繰り返してきた。根拠のない主張で、エゴ以外の何物でもない。

 国民にとって不幸だったのは、厚労省と、日本医師会や医学部長たちの利害が一致したことだ。ただ、彼らも医師不足対策にまったく努力しないわけにはいかない。その際の言い訳に使うのが、舛添氏が大臣時代にやった医学部定員の増員だ。しかしながら、これも必死に骨抜きにしようとしてきた。

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