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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

首都圏の医療が崩壊の危機 医師不足深刻で中東並み 解消と逆行する厚労省の詭弁

文=上昌広/東京大学医科学研究所特任教授
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 50年、首都圏の医師不足は深刻で、東京都ですら満足な治療を受けることができなくなる可能性が高い。

 どうすればいいのだろう。

 厚労省にやれることはあるのだろうか。残念ながら、筆者は厚労省には期待できないと思う。医療は医師がいなければサービスを提供できない。厚労省が「やがて医師は充足する」という態度を変えない限り、医師数は増えない。このまま医師が不足した状態が続けば、厚労省が公定価格を設定し、補助金や規制を強化して、「効率的」な医療提供体制を整備しようとしても限界がある。

 食糧難に喘いだ戦後を想像すればいい。政府は食糧管理制度を通じて、食料を「適切に」配分しようとした。ところが、国民は配給される食糧だけでは足りず、縁故を頼って農家を訪ね、また闇市で食料を調達した。1947年10月には闇米を拒否し、配給食料だけを食べ続けた裁判官の山口良忠氏が栄養失調に伴う肺浸潤(結核)で亡くなったことが話題となった。享年33歳だった。日本の食糧難が改善するのは、米国が緊急援助し、我が国が復興するまで待たねばならなかった。つまり、食料の供給量が増えるまで事態は改善しなかった。

 おそらく医療でも同じ事が起こるだろう。厚労省は、「かかりつけ医制度」や「在宅医療」を推進している。これは、「配給制度」により、サービス供給の効率を上げようとしていることにほかならない。しかしながら、この方法では問題は解決しないのは歴史の教訓だ。

信頼できる医師との関係構築

 では、患者はどうすればいいだろう。身も蓋もない言い方だが、自分で身を守るしかないと思う。具体的には、医者とコネとつくることだ。

 これは筆者の個人的な経験とも一致する。兵庫県尼崎市在住の70代になる筆者の母は、90代の祖母を自宅で介護していた。祖母は寝たきりだった。誤嚥性肺炎などの合併症を繰り返していた。14年の冬、祖母は突然、呼吸困難を訴えた。深夜、母から電話で相談を受け、「かかりつけの先生に相談し、指示を仰ぐように」助言した。母は、かかりつけの高齢の医師に相談したが、入院できる病院は紹介してもらえなかった。思い悩んだ母は、かつて外科医である弟が勤務していた大阪市内の病院まで、タクシーで祖母を運んだ。その距離20キロくらいだ。

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