「Thinkstock」より
結成当初から書記長などとして中核を担ってきたのが、設楽清嗣氏だ。現在は一線を退き、アドバイザーとしてユニオンをサポートする。
設楽氏は、最近、団体交渉のあり方が変わりつつあると指摘する。
「90年代は、会社も我々も激しく言い争うことができた。怒鳴り合いもあった。ある意味で、ラフな時代だった。最近は、会社の対応が精密化している。記録をきちんととり、戦略を練って接してくる。労働者に不利な事実を強引につくり上げたり、でっち上げたりして、それを突き付けてくることが巧妙になっている。一段としたたかで悪質になった」
社員を罵倒する弁護士
設楽氏は、労働者やユニオンに対して攻撃的な姿勢をとる弁護士が増えている、と怒りを込めて語る。
「先日、有名な外資系の証券会社と団体交渉をした。そこに勤務する男性が、我々のところへ相談に来たのだが、どうやら退職強要を受けているようだった。2年ほど前に中途採用を経て入社したが、同世代の中で賃金が多少高かった。そのため彼の上司は、ほかの社員がミスをしても責めないのに、その男性の場合はささいなミスでもしつこく追及し、退職勧奨をした。つまり、退職させるための“いじめ”だ。
我々は当該会社に団体交渉を申し入れ、人事部と話し合った。その場には、会社が雇った50代の男性の弁護士が現れた。弁護士は実績が豊富で優秀ではあるが、話し合いの場で当事者である組合員をなじることがある。『こんなミスをしているのか。あなたは管理職だろう。高い給料をもらっているのに』などという具合だ。
団体交渉の本題と関係ないようなことを持ち出し、皆の前でなじる。これでは、その組合員はますます落ち込んでしまう。上司のいじめで、すでに精神疾患になっていたにもかかわらずだ。
団体交渉が始まる前に、今回の相談者である男性に、『会社が雇った弁護士があなたに厳しく言うが、ひるむなよ』と声をかけておいた。彼も心得ていたようだが、いざ交渉が始まり弁護士が大きな声でなじると、たじろいだ。それでも、懸命に反論していた。あのファイティング・ポーズが大切で、逃げたらダメなんだ」