庭山一郎「BtoBマーケターの視座から眺めてみれば」

「人口減少で日本衰退」論のまやかし ではなぜ日本の適正人口を語らないのか?

「Thinkstock」より

 私は20年以上、BtoBマーケティングの仕組みをつくる企業のサポートをしていますが、言葉の定義や基準を明確にしないでスタートしたプロジェクトや会議が成果を出したのを見たことがありません。考えてみれば、これは企業内の会議やプロジェクトに限った話ではなく、この国に蔓延する「曖昧さで争いを回避する知恵」が根っこにあるのかもしれません。

 マーケティングの仕組みづくりで苦戦している企業を訪問した時に、担当者から、

「案件化率が低くて困っています」

 というお悩みを聞くことがありますが、「御社の案件の定義はどういうものですか?」と質問すると、決まった定義がなかったりします。

「新規が欲しいのでマーケティングの仕組みをつくってください」と言われて、

「その新規とは新規の企業(アカウント)ですか、新規の案件ですか?」

 と質問すると、会議に参加している部長どうしで喧嘩になったりします。企業は新しい市場を開拓したいし、数字を追っている営業からすれば既存の取引先からの新規案件のほうが、すでに口座が開いている分クロージングが早いので歓迎されるのです。

 このように、私はマーケティングのコンサルティングに入る時はまず、目的を確認してから、その目的に合ったかたちに言葉や単位の定義を揃えることからスタートします。これをやらないと、不毛な会議や無駄な報告を繰り返すことになるからです。

 そして、残念ながらこれは、何もマーケティングや経営に限ったことではないのです。

人口問題論議における疑問

『BtoBのためのマーケティングオートメーション 正しい選び方・使い方 日本企業のマーケティングと営業を考える』(庭山一郎/翔泳社)

 ある日の新聞に日本の少子高齢化を憂う記事が掲載され、その同じ日の同じ新聞にロボットの進化によって人間の仕事が奪われる近未来を憂う記事が掲載されています。働き手が少なくなることを心配しながら、同時にロボットに仕事を奪われる心配をしている、というまるで風刺画のような風景を毎日のように見かけます。

 今の日本で「人口問題」といえば、少子化と長寿化があいまって、減少を続ける労働人口で増え続ける高齢者を養わなければならない、という問題だと思います。シンガポール建国の父といわれる故リー・クアンユー氏の言葉を引用して、「少子化に手を打たず移民も受け入れない日本は、今後衰退するだろう」という論陣を張る人もいます。逆ピラミッドで人口構成を表現したグラフを指しながら解説する人の話を聞いていると、まるで高齢者は永遠に生き続けるような錯覚を覚えます。そして、みんなが口を揃えて、人口が1億人を切ったらもう日本はダメだ、という論調です。

庭山一郎/シンフォニーマーケティング株式会社代表取締役

1962年生まれ。アスクプランニングセンター、日本オルテックを経て1990年にシンフォニーマーケティングを設立。データベース・マーケティングの導入コンサルティング、インターネット関連事業などを手がける。
実戦的なマーケティングの経験を基に法人営業(BtoB)の顧客・見込み客管理に特化したアウトソーシングビジネスに着手。 森林の再生をライフワークにするナチュラリストでもある。
シンフォニーマーケティング株式会社

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