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「ココロに効く(かもしれない)本読みガイド」山本一郎・中川淳一郎・漆原直行

これはスゴい良書だぞ!とっても多くの示唆と興奮を与えてくれる『プリンス論』

文=中川淳一郎/編集者

 『スティーブ・ジョブズ1・2』(講談社)とかに代表されるが、「よし、発売日に買えた。よし、勉強するぞ」という妙な権威主義的なかたちで読むものなのだが、プリンスという若干クレージーな側面も持っている稀代のミュージシャンをそういった座敷で正座して読む気にはならないのである。ましてや『ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い』でプリンスがすんでのところで「呪い」にひっかからなかったエピソードを読んでいただけに、その真相を知りたいと思うのは当然ではないか。

 そこに「157センチとされる身長」が影響しているのでは? と本書では予測されており、こうした細部に渡る一見どうでも良さそうなエピソードから、プリンスを読み解いていく。決してプリンスを礼賛するでもなく、あくまでも年代を追って一つ一つその時にリリースした作品を紹介するとともに、資料を基に関係者の発言を拾っていく。

 この緻密な作業を経て「伝記」が誕生するのである。確かに、プリンスの歌は何曲も知っているし、アルバムも持っている。だが、実際にどんな人物なのかについて興味を抱いたことはなかった。しかし、読み終えた後にはプリンスに対する興味が湧いたとともに、別の「伝記」も読みたくなった。

 それは、音楽業界に限っていえば、Guns N’ Rosesの初期の頃の名ギタリストである「イジー」や、Boys Town Gangの大ヒット曲『Can’t Take My Eyes Off You』のプロモーションビデオに登場する2人の男のその後の人生がどうなったのかや、マイケル・ジャクソンの『The Way You Make Me Feel』のミュージックビデオに登場する女性のその後のキャリアと、あのビデオに登場することが何をもたらしたのか、などを知りたい。

 いや、これをオレがやるべきでは! といった発奮をさせてくれるのだ。というのも、西寺氏は「プリンスの伝記」という誰もが成し遂げたことがないことを達成したのだから。つまり、多くの人が潜在的に知りたいであろうことについて、徹底的に調べることにこそニーズがあるよ、というモノカキにとっては良いヒントを与えてくれたのだ。さらに、一般企業の商品開発担当にとっても示唆を与えてくれるのが『プリンス論』なのだとオレは思ったのである。
(文=中川淳一郎/編集者)

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