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中村芳平「よくわかる外食戦争」

ワタミ、経営危機への入り口…訪日客殺到で驚異的売上増の「北海道」との致命的な差

文=中村芳平/外食ジャーナリスト
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「サミット開催の時は、世界各国から訪日客がたくさん訪れました。目的は観光や温泉などですが、近年は日本食ブームを背景に、居酒屋で本物の和食や日本酒を楽しみたいという要求が高まっています。洞爺湖サミットではそういう訪日客が居酒屋『北海道』などに来店、08年度には、コロワイドでは『北海道』だけで年間1万7000人の訪日客が来店しました」(業界紙記者)

 居酒屋市場が低迷する中で、コロワイドにとって訪日外国人の来店は、天の恵みであった。これを機に、コロワイドは訪日外国人の取り込みに力を入れだした。「北海道」を受け皿にして、関東、関西などへと対象店舗を広げていった。こうしてコロワイドは、09年度には訪日外国人客を5万9000人獲得した。

 訪日外国人客は東日本大震災の発生した11年3月以降に激減し、年間622万人に落ち込んだ。だが12年12月に発足した第二次安倍内閣がデフレ脱却のために進めた経済政策「アベノミクス」で円安が進行、13年には訪日客は年間1036万人と、初の1000万人の大台を突破。14年には年間1341万人を記録した。15年度では訪日外国人数は過去最多の1900万人を超すのは確実だ。また、訪日外国人客消費は3兆円超に達する見通しだ。いまや外食市場には、訪日外国人特需という“神風”が吹きまくっている。

 コロワイドは訪日外国人を集客するために、次のような4つの対策を立てた。

(1)訪日外国人向け専門部署の設立
(2)海外・国内旅行会社に営業し、訪日客向けの店(昼、夜)を観光コースに組み込んでもらう
(3)中国、韓国、台湾、タイ、欧米人向けのメニュー開発
(4)現場の不平・不満の声に耳を傾け、最適なサービスを提供する
 
 コロワイドは12年10月には訪日外国人をターゲットにした専門部署「営業外商部」を新設し、13年6月には人員を倍増した。コロワイドの専門部隊は国内外の旅行代理店のツアー担当者と付き合いを深め、訪日客の呼び込みに成功した。中でも「北海道 新宿アイランドタワー店」(44階、700席)はホテルの宴会場並みの大きさだが、「夜景が綺麗だ」「カニ、刺身、寿司などの人気メニューが、英語、中国語、韓国語で読める」などと人気となり、訪日ツアー客が観光バスを連ねて押し寄せている。一度に300~500人規模の中国人ツアー客が来ることもあるという。

中村芳平/外食ジャーナリスト

中村芳平/外食ジャーナリスト

●略歴:櫻田厚(さくらだ・あつし)

1951年、東京都大田区生まれ。高校2年生の時に父が急逝し大学進学を断念、アルバイトして家計を助ける。都立羽田高校卒業、広告代理店勤務。72年に14歳年上の叔父(モスフードサービス創業者・櫻田慧)に誘われ「モスバーガー」の創業に参画。フランチャィズ(FC)オーナーなどを経て、77年に同社入社。直営店勤務を経て教育・店舗開発、営業などを経験。90年、初代海外事業部長に就任、台湾の合弁事業の創業副社長として足掛け5年半でモスバーガーを13店舗展開。1985年の株式上場と244店舗展開(16年9月末)、そして同社の海外展開の基礎をつくった。慧氏は97年にくも膜下出血で急逝、享年60。櫻田氏は98年社長に就任、14年会長兼社長に就任し、今年6月、社長を常務取締役執行役員の中村栄輔氏(58)に譲った。社長交代は18年ぶりのことだ。櫻田氏は中村氏に国内事業、新規事業を任せ、海外事業に全力を注ぐ構えだ。「モスバーガー」を世界のブランドにするという、夢の実現に向かって挑戦しようとしている。

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