売り上げとも関係?

 もちろん紀伊國屋だけでなく、エレベーターガールを配置している店は現在でもいくらか存在する。日本橋三越本店や日本橋タカシマヤ、新宿ならば小田急百貨店、池袋ならば東武百貨店や西武池袋本店にはエレベーターガールがおり、実際に乗ってみるとやはりその“おもてなし”されているという感覚は、百貨店のホスピタリティを体現したもののように感じられた。

 近年、百貨店は“衰退産業”と揶揄されることも多く、実際にピーク時よりかはかなり売り上げが下がってしまっている。だが、今年の1月19日に日本百貨店協会が発表した全国百貨店売上高概況を見てみると前年比0.3%増の6兆2124億円で、これは3年連続で微増している結果となっている。もちろん訪日観光客の増加がその売り上げ推移を支えているということもあるだろう。

 だが、前述したウォール・ストリート・ジャーナルで触れられているように、日本特有のホスピタリティである“おもてなし精神”を百貨店で体験してみたいという人も少なからずいるのではないか。

 エレベーターガールを常駐させることで当然人件費がかかるわけだが、そもそも百貨店や書店の来店客はエレベーターを操作するくらいのリテラシーは持っているはずだ。それにもかかわらずエレベーターガールを雇用し続けるのは、 “おもてなし”への矜持のようなものを感じずにはいられない。
 
 日本出版販売株式会社が今年発売した『出版物販売額の実態(2015)』を覗いてみると、昨年の書店の売上高で約1067億円と1位となっているのが紀伊國屋。出版不況と呼ばれる昨今、書店の売り上げももちろん厳しいものとなっているのだが、なんと紀伊國屋の13年度の経常利益は7億1400万円(前年比86.5%増)と大幅増益、当期純利益は6億7400万円(同30.4%増)で、7年連続の黒字決算となっている。

 一見、利益を度外視した“おもてなし”サービスであるが、それにより顧客満足度が高まり、結果として利益につながっているのではないだろうか。
(文=編集部)

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